出版社内容情報
人が生きて行くには痛みが伴う。そして、人の数だけ痛みがあり、傷むところも、傷み方もそれぞれちがう……様々に生きづらさを背負う人間たちの業を、林蔵があざやかな仕掛けで解き放つ。
内容説明
大坂屈指の版元にして、実は上方の裏仕事の元締である一文字屋仁蔵の許には、数々の因縁話が持ち込まれる。いずれも一筋縄ではいかぬ彼らの業を、あざやかな仕掛けで解き放つのは、御行の又市の悪友、靄船の林蔵。亡者船さながらの口先三寸の嘘船で、靄に紛れ霞に乗せて、気づかぬうちに彼らを彼岸へと連れて行く。「これで終いの金比羅さんや―」。第24回柴田錬三郎賞を受賞した、京極節の真骨頂。
著者等紹介
京極夏彦[キョウゴクナツヒコ]
小説家、意匠家。1963年北海道生まれ。94年、かねてよりアイデアを温めていた妖怪小説『姑獲鳥の夏』で小説家デビュー。『魍魎の匣』で第49回日本推理作家協会賞、『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、『後巷説百物語』で第130回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みも
197
鮮やかな仕掛けや巧みな構成もさる事ながら、柔らかな関西弁で綴る文章の巧さが際立つ。詩篇のように類似の言葉を畳みかける事で濃度が増し、その韻律の波濤の様なリズムは小気味よく、耳触りの良さに加えて緊張感をも生み出す。「これで終いの金比羅さんやー」で締め括る天誅は「亡者船さながらの嘘船に乗せ、気づかぬうちに相手を彼岸に連れて行く」一文字仁蔵から裏仕事を請け負うのは靄船の林蔵。妖しげな中編が7篇。怪談噺ではあるがおどろおどろしさはなく、人間の「業」が生む哀切に満ちた愛憎劇や、成仏出来ずに彷徨う魂が彩る怨念の世界。2021/06/15
勇波
91
敢えて積んだままにしてたのにとうとう読んじゃったなぁ。もう皆さんには会えないのかなぁ。「続西巷説百物語」書いてくれればいいのに。。さて今回は林蔵さんが主役です。はてこんな感じの兄さんでしたかな?物語の一つ一つは期待通りの展開に一安心。ただいつもの闇の部分が薄いように感じます。しかし最後の「野狐」。これです、これ!『御行奉為』『これで終いの金比羅さんや』の二本締め!うーん贅沢★2015/06/15
優希
88
第24回柴田錬三郎賞受賞作でありシリーズ完結編になります。小江戸ではなく、上方が舞台なのに少し違和感を感じました。でも、どこであってもいつもの百物語であることで包み込まれている物語に次第に慣れていきました。最終話は全員集合で、これぞ百物語の真髄だと思わされます。切なさもありますが、それもこの物語の味わいですね。2019/04/25
Yuna Ioki☆
53
901-104-22 とうとうまたいっつあんともお別れ(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)他の百物語と違って林蔵がメインに。ラストでは百介も仕掛けに加わるおまけ付。「西」は改心していれば救いがある仕掛け。「豆狸」では久々に泣いた(。ŏ﹏ŏ)2015/03/18
ソラ
48
今回は巷説百物語シリーズのスピンオフ的な作品集。どれも良かったけどやっぱり最終話の又市も登場する話が最も盛り上がったかなぁと。2013/12/30