出版社内容情報
モンゴルと南シベリアの間に位置し1921年から23年間独立国であったトゥバ.1929年,独立国時代のトゥバに入ることのできた唯一の外国人で,民族学・考古学者であったメンヒェン=ヘルフェン(1894-1969)が鋭い観察眼をもってトゥバ文化の多面性や当時の政治状況を生きいきと伝えてくれる貴重な旅行記.写真多数.
内容説明
モンゴルと南シベリアの間に位置し1921年から23年間だけ独立国であったトゥバ。1929年、独立国時代のトゥバに入ることのできた唯一の外国人で、民族学・考古学者であったメンヒェン=ヘルフェン(1894‐1969)が鋭い観察眼をもってトゥバ文化の多面性や当時の政治状況を生きいきと伝えてくれる貴重な旅行記。写真多数。
目次
私はどのようにしてトゥバに入ったか
シベリアの旅
ハカス人
ミヌシンスク
トゥバへ
クズル・ホト
トナカイ
狩猟
牧畜と農業
家とユルタ〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
molysk
64
シベリアとモンゴルの境界に、1921年から23年間だけ存在した国家があった。トゥバ人民共和国。本書は、同国に唯一入ることを許された外国人民族学者による紀行である。モンゴル系遊牧民族であるトゥバ人は独立国家を持ったものの、その実態はソ連による植民地であった。鉱石や家畜といった富は収奪されて、誇り高き遊牧文化は失われつつあった。筆者は哀愁を帯びた筆致でトゥバの行く末を嘆きながら、この地を去る。同国がソ連に併合されるのは、その15年ほど後のことだ。本書は大国に支配される少数民族の悲哀を理解する一助となるだろう。2023/03/21
松本直哉
30
民族的にはモンゴル系だが言語はチュルク系、ラマ教とシャーマニズムが共存する遊牧民と生活をともにしたドイツ人学者の文章は未知の文明への驚きと人々への親愛の情にあふれている。20世紀になって中国・ロシア・モンゴルの領土争いに翻弄され多くの血が流れた。遊牧の民に国境の概念など理解不能だろうし、文字なしで幸せに生きてきたのに、急にアルファベットやキリル文字を押しつけられて当惑するのも無理はない。生き残るためには大国の傘に入らなければならないのが少数民族の宿命なのかもしれないけれど。2022/04/04
yoneyama
12
現在ロシア国内のマイナー共和国ながらここの民族音楽演奏家のススメで読む。1920年代、革命直後のロシアの混乱期、20年ほど名目的独立期だったトゥバのドイツ人民俗学研究者の訪問記。世界から知られない空白域空白時代をグーグルマップで地形確認しながら読む。トナカイ、家族、ユルタ、狩猟、ソ連と化していく兆しなど。ウクライナ侵攻しているショイグ国防相はここの出身なのだ。写真の質がすごく良い。仮面舞踏の行事は、花祭りを思わせる。シャマンの仕事。トゥランという地名はトゥランドットと関係あるのかな?2023/03/10
Francis
9
19年ぶりの再読。ロシア・中国の両大国の意向に翻弄され、20数年間だけ存在したトゥバ共和国の貴重な旅行記。トゥバ人の文化、民俗が実に生き生きと書かれている。トゥバ地方は現在はロシア連邦の一共和国ながら、日本ともトゥバ独自の文化ホーメイを通じてかなりの人が交流をもっているらしい。ロシアへの編入を予見した著者が最後に書いたこの言葉が切ない。「一体お前はどうなるのだろうか かわいそうなトゥバよ!」2015/09/03
えっ
5
読んで良かったとめちゃくちゃ強く思った。南シベリアとモンゴルの間にあるトゥバという国。凄い時代に凄い場所にある国へただ1人入れたのが、著者のような素晴らしい人物であることが奇跡的だ。生き生きとした文章も、民族を尊重する視点も本当に素晴らしい。まずトゥバという国があること、ソビエトロシアが近接するアジア諸国にしたことも知れて良かった。訳者解説の丁寧さと熱意も胸を打った。2023/02/04