出版社内容情報
激動の幕末維新を背景に大実業家・渋沢栄一(一八四〇‐一九三一)が疾風怒濤の青春を語る自伝.尊攘倒幕の志士→徳川家家臣→明治政府官僚→在野実業家と転身を重ねる著者の生き方は鋭い現実主義に貫かれた魅力をもち,維新変革をなしとげたエネルギーが生きいきと伝わってくる.実業家時代を概観した「維新以後における経済界の発達」併収.
内容説明
激動の幕末維新を背景に、大実業家・渋沢栄一(1840‐1931)が疾風怒涛の青春を語る自伝。尊攘倒幕の志士→徳川家家臣→明治政府官僚と転身を重ねる著者の生き方は鋭い現実主義に貫かれた魅力をもち、維新変革をなしとげたエネルギーが生きいきと伝わってくる。実業家時代を概観した「維新以後における経済界の発達」を併収。
目次
雨夜譚
維新以後における経済界の発達
1 ~ 3件/全3件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
masabi
13
早くから中国古典をたしなみその後の人生の指針になったことは「論語と算盤」でも語られている。徳川幕府から明治政府への政変のなかでなかなか自身の希望は通らないが、有能で徳のある人物であることから様々な場面で舞台に引っ張り出される。農民、浪人、官職から遂に起業家へと進む。その胸中には常に国を憂いどう改革するかを思案している。望まない仕事でも力を抜かず結果を出すことが思いがけない幸運を運んでくる。2014/07/26
ゆうきなかもと
12
まぁ、面白い。大河ドラマで取り上げられているから。というわけでもないが。世の中で話題になっていると読むスピードは上がりますな。 アダム・スミスの言う「神の見えざる手(≒市場メカニズム)」が働くためには道徳的前提を共同体が持っていなくてはならないが、渋沢が説く「義利両全」はそれに通じるものがある。しかしながら、義利両全では義が利と並立されてしまっている感がある。本来は左氏伝にある通り「義は利の本なり、利は義の和なり」でなくてはならない。渋沢栄一よくも悪くも日本的資本主義の源泉とも言える存在なのだろう。2021/03/22
壱萬弐仟縁
11
あまよがたり。一族の間ではウヤタン(317頁)。幼児の読書(16頁~)。大学、中庸など、小学低学年で読んでいるあたり。この実業家はとてつもない早熟。素寒貧の一書生(61頁)。フランスに出かけたようだ(写真129頁)。凛々しい侍という感じ。142頁になると、なぜかチャップリンみたいな感じに変わっているのがコミカルな印象を受けた。常平倉(じょうへいそう)とは、低い米価の時は政府がコメを高く買入れ、高い時は貯蔵米を安く売り、米価を安定化させる(308頁校注)。これはTPPでも必要な発想であろう。過剰在庫想定で。2014/01/17
まんげきょう
7
渋沢栄一の自伝で、誕生から大蔵省退官までが記されている。当時34歳である。その年齢からするとなんと波乱に満ちた人生かと思う。幕末から明治維新を経て、明治6年までの自身に起こった出来事とその思いが綴られている。 古い読み物だが、語りのように書かれているので読みやすい。渋沢栄一の思いが直に伝わってくる。 幕末から明治維新のことは、坂本龍馬、西郷隆盛や大久保利通たちが表舞台にでてくるが、そうではない流れから見るのも、たいへん興味深い。2021/05/01
庄屋之者
6
明治6年までの自伝であるが、渋沢栄一の生涯は実に独特なものであり、様々な偶然が重なってその才能が認められたと言っても過言ではない。そもそも「中の家」が血洗島で優位な立場であったことや、父親、従兄弟が教養に優れていたことから、その偶然は片鱗を見せているが、平岡円四郎との出会いや徳川昭武の洋行も栄一の意向に拘らず生じた出来事であり、偶然と言わざるを得ない。だが、一方で栄一の様々な事象に対する注意力はその偶然をモノにしたのであり、一連の偶然を以て栄一の実力を疑うことはできない。2021/06/05