出版社内容情報
学問・芸術が絢爛たる花々を咲かせた「精神の世界都市」ウィーン.文学界にはシュニッツラーやホフマンスタールなど,いずれも一筋縄では行かぬ文人が輩出し才を競いあった.夢や無意識を描いた短篇から,市民社会の欺瞞を暴く辛辣皮肉な風刺作品,風俗小説,パロディ,SFまで,その多彩な世界を一望する待望のアンソロジー.
内容説明
学問・芸術が絢らんたる花々を咲かせた「精神の世界都市」ウィーン。文学界にはシュニッツラーやホフマンスタールなど、いずれも一筋縄では行かぬ文人たちが輩出し才を競いあった。その多彩な世界を一望し、特異な精神風土を浮び上がらせる待望のアンソロジー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
129
19世紀末から20世紀初頭にかけて書かれた16の短篇小説を収録。時はあたかも世紀末から第1次世界大戦前夜あたりまで。この時期の文化をリードした街をあげるなら、やはりパリとウィーンがその筆頭にあげられるだろう。ウィーンにはクリムトがいて、エゴン・シーレがいて、街はユーゲント・シュティールの意匠に溢れていた。音楽界もまた当時はマーラーがウィーン・フィルを率いていた。それに比すれば文学界はいささか地味だが、それでもホーフマンシュタールやシュニッツラーがいた。本書は随所にこの時代のウィーンを髣髴とさせるのである。2014/08/26
Nobuko Hashimoto
21
今月は世紀転換期の中欧に浸る月間にしているので。拾い読みしかできていないけど一応記録。世紀転換期のウィーン文化を象徴する作家たちの短編集だが、なぜこれらを選んだのだろう、それぞれもっといい作品がありそうだが、という感じが否めない。挿絵に使っている絵はどれもいいんだけど。2021/03/08
Tadashi_N
21
世紀末ウイーンに集まった才能の多様さ。2016/11/06
瓜坊
19
ハプスブルク帝国の末期のウィーン、他民族に寛容な文化都市で爛熟した芸術の街ってイメージがあるけれど、その時代のウィーンを横に切った断面図のような短編集。先にイメージがあるから、退廃とか耽美とか、全体的な雰囲気はそういう言葉が漂っている。シーレやクリムトの挿絵も相まって。でも一括りにできない多様さ。現代の日本に「終わりなき日常」って言葉があるけど、この時代のウィーンって終焉が避けられない状況で、溜まりに溜まった古からの美の中で燃え朽ちるように生きてる感じがする。2019/03/18
rinakko
8
解説にある言葉の通り、“時代を横に切る”とても興味深いアンソロジーだった。一つ、また一つと続けて読んでいくことで、重過ぎず軽過ぎない絶妙な豊かさをより感じやすく、より幅広く堪能できる内容になっている。辛辣な皮肉も、嘲弄、憂鬱、幻想、厭世、優雅に怠惰に滅びゆく貴族の姿も…。頽廃の色濃く、いささか毒が強めな作品が揃っているところは流石だ。2014/02/09