岩波文庫<br> 仮装人物

岩波文庫
仮装人物

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  • サイズ 文庫判/ページ数 333p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003102237
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0300

出版社内容情報

古い型の女房しか知らず世間の恋愛事件をも冷やかに見すごしてきた中年作家・庸三を,恋の焔,情熱のるつぼへたたきこんだ美女・葉子とはどういう女か? その女に若い相手ができたとき,なお葉子から抜け切らない庸三は何を探し求めてやまなかったか? これらの人物をかりて,人間の愛欲を忌憚なく描いた秋声の代表的な作品.解説=川端康成

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

michel

12
★4.0。仮装舞踏会で被せられたサンタクロスの仮面の髯がマッチを摺るとめらめら燃えあがる…象徴的な冒頭。妻を亡くした老作家の庸三は、葉子の出現によって、情痴の世界へのめり込んでゆく。女郎蜘蛛のような陽子の糸に苦しみもがくうちにも、自らの身を投じてしまう庸三。冷やかに己れのその愛欲体験を凝視する“別の自分”の眼で羞恥の姿を自嘲的に書いた私小説。ー葉子のやうな天性の嬌態をもつた女の周囲には、無数の無形の恋愛幻影が想像されもするが--それよりも彼女自身のうちに、恋愛の卵巣が無数に 蔓はびこ つてゐるのであつた。2021/02/09

きょちょ

12
山田風太郎が推す、私小説の名作。癇癪持ちで優柔不断な主人公と、男から男へと渡り歩く奔放な美女との恋愛物語。ただ、それだけの単純な話ではなく、家族も含めしっかり人間が描かれている。昭和初期の時代背景だが、それにしても恋に「苦悩」「懊悩」はするものの、主人公たちは、何かあれば旅館やホテルに泊まったり、美味しいものを食べに行ったり、うらやましい自由人である。葉子のモデルとなった人の写真を観たが、確かに「美人」で、徳田秋声が翻弄されるのもわかる。でも、物語としてはちょっと長いかな・・・。★★★★2015/11/23

meg

1
徳田秋声。 物語もそうだが、質感を愉しむ。2023/07/11

asanosatonoko

1
自然主義文学の大家である作者の代表作。自然主義って言うと難しいが、つまりは人間の営みを①客観的に見て②作品に構成し直し③感情表現もあえて淡々とした客観的描写で記した作品、と言う感じかと理解しました。 抑圧された表現なので、文字面は淡白ですが、内容は作者の実話を元にしてるだけあってスキャンダラスで、昔の作品ってけっこう今より過激な面もありますよね。 作者、作品、自然主義についての纏めと感想をアップしました。 https://asanosatonoko.com/09/20/d000057/2019/09/21

R As Well

0
面白かった。つぶさに説明される登場人物たちの心理は愚かであり、現金で利己的なのだが、うら淋しい描写の中に名状しがたい切なさを感じた。日も落ちた逗子の砂浜で、煙草に火をつけようとする鷹三に葉子がそっと近づいて着物の袖で風を遮るシーンは名場面と言えるだろう。2016/12/12

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