内容説明
「生」をめぐる帝国の権力を可視化する
植民地朝鮮において産婆や胎教がいかに存在し機能したのか。
朝鮮社会の葛藤を、新聞・雑誌などの言説空間に注目して浮かび上がらせる力作。
日本統治下にあった20世紀前半の朝鮮における「出産の場」、とくに産婆や胎教がどのように機能していたか、言説分析を通して明らかにする。「出産」をめぐって日本人の役人、医師、朝鮮人産婆、優生学者などが、新聞・雑誌でさまざまな言説を展開した。「近代の知」が旧弊の「風習」とときに対立し、ときに協力関係を結ぶといった複雑なせめぎあいがあったことを実証的に論じ、出産する女性をとりまく様相を起点に「歴史叙述を女性へ取り戻す」ことを試る。
目次
序章 「出産の場」と「生政治」
第一部 出産風習と産婆制度
第一章 植民地朝鮮における出産風習と産婆養成政策
第二章 朝鮮人産婆の労働環境と社会的位置づけ――1920年代の新聞・雑誌に見る産婆の物語
第三章 産婆と風習のせめぎ合い、そして出産医療の〈現実〉
第二部 胎教と「生政治」
第四章 出産風習としての胎教と「優生学」
第五章 韓半島にもたらされた「近代の知」と胎教――女性教育、民族改造、〈朝鮮学〉振興運動
終章 近代化する「出産の場」と女性