恥と運命の倫理学 - 道徳を乗り越えるためのギリシア古典講義

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恥と運命の倫理学 - 道徳を乗り越えるためのギリシア古典講義

  • ISBN:9784766429923

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内容説明

・20世紀を代表する哲学者、バーナード・ウィリアムズによるカリフォルニア大学の名講義。
・西洋哲学が見落としていた「倫理」をギリシア古典に発見し、近代道徳の呪縛から解放する〈反道徳的な倫理学〉。
・解説=納富信留(東京大学大学院教授)

 近代以降の進歩主義的な見方では、古代ギリシア人は未開の心性をもち、より洗練された道徳が人間性を陶冶してきたと捉えられてきた。
 ウィリアムズはこのような道徳哲学の提示する人間が、生きられた経験から切り離された、無性格な道徳的自己であるとして批判する。それとは対照的に、具体的な性格と来歴をもつ人々を描く、ホメロスの叙事詩やアイスキュロス、ソポクレスらの悲劇作品を読み解き、そこに流れる豊かな倫理的思考を明らかにする。
 道徳哲学やプラトン、アリストテレスらの哲学を批判的に参照しながら、恥と罪、必然性(運命)と義務、運命と自由意思、責任と行為者性といった概念をめぐる議論を通して、古代と現代を通じてこの現実を生きる人間の生の姿を描き出す、カリフォルニア大学の名講義。

目次

はじめに
二〇〇八年版への序文 A. A. ロング

第一章 古代の解放

第二章 行為者性のいくつかの中心 

第三章 責任を認識すること 

第四章 恥と自律 

第五章 いくつかの必然的なアイデンティティ 

第六章 可能性・自由・力

解説 古代ギリシアから私たちが学ぶこと 納富信留 
訳者あとがき 
古典文献一覧 
参考文献一覧 
附録1/附録2 

索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

buuupuuu

22
古代人は、心や道徳について、野蛮で未熟な考え方をしていたと、しばしば言われる。これが正しくないということを、ウィリアムズは、ホメロスなどのテクストを引きながら、具体的に示そうとしている。意志決定、責任、アイデンティティ、自由、運といった事柄について、古代人は現代人と多くの考えを共有している。こういった事柄に関して、私たちは、古代人について誤ったイメージを抱いているばかりか、自分自身についても誤解している。たとえば、恥の文化から罪の文化への移行があったとされる。しかし、恥は、現代人においても働き続けている。2024/12/17

エジー@中小企業診断士

5
ホメロスの叙事詩には「意図」にあたる単語が存在しない。だがそれは古代ギリシア(プラトン、アリストテレス以前)の人々が行為を為すにあたり意図を持たないとか、その概念のない未熟な世界であったことを意味しない。恥は行動、性格、結果の間を媒介し、倫理的な要求と生のそれ以外の部分の間を媒介する。ギリシア人のもつ幾つかの観念を見直すことで私たちが自ら必要とする倫理的観念をよりよく理解できるようになる。社会的アイデンティティの強制力を古代人は必然性や運の問題としたが近代人は正義などの道徳によって制御しようとする。2025/01/05

フクロウ

4
「それにしても敵とはいいながら、憐れみを覚えます、……思えばあの男の身の上は、すなわちわたしの身の上。」(89頁。『アイアス』からの引用。) 古代ギリシアには奴隷制も女性差別もあり、近代以降よりはるかにもとるから、特に倫理学において参考にすべきことはない。しかし、本当に?ソポクレスやエウリピデスの悲劇に着目し、人間とは何かを見つめ、そこで描かれる倫理を見る。恥とは自省。自由意志のフィクション性や偶然的要素をどう考えるかなどは小坂井敏晶『責任という虚構』と概ね被る。『ピロクテテス』はやはりよい。2025/02/16

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