【紀伊國屋書店出版部】9月新刊『台湾人の歌舞伎町――新宿、もうひとつの戦後史』
8年間の取材をもとに描かれた、
知られざる戦後史
戦後、焼け野原となった新宿に新たに構想された興行街・歌舞伎町。
その歌舞伎町には台湾人華僑が集結、歌舞伎町初の映画館〈地球座〉をはじめ、名曲喫茶〈スカラ座〉〈らんぶる〉、歌声喫茶〈カチューシャ〉、中華料理店〈東京大飯店〉、総合レジャービル〈風林会館〉、寿司屋、パチンコ店、キャバレー、クラブ、ホテル、会館などが、彼らの手でつくられた。
彼らはいったい、どのような経緯で歌舞伎町に登場することになったのか。
そのルーツをたどるうち、著者は、安田組が戦後すぐに築いたヤミ市「新宿西口マーケット」にたどりつく――
「この地にはアジア太平洋戦争の敗戦以前から、"日本人"とされていた朝鮮半島出身の人びとや台湾人が暮らしていた。彼らは日本で終戦を迎え、日本人と同じように焼け跡から立ち上がり、新たな時代を生きていかなければならなかった。そのまま日本に残留した人びとは、昭和27(1952)年、サンフランシスコ講和条約の発効によって日本国籍を喪失するが、その後も"外国人"として、日本の高度経済成長の一端を担ってきたのである。
新宿の戦後史を調べると、日本人による復興の物語はあっても、同じ空間にいたはずの"外国人"のことは、ほとんど語られていない。当時を知る人びとの多くが故人となってしまった現在、そこに光を当てた私たちの試みは、知られざる新宿の戦後史を掘り起こすことができた最後のチャンスでもあった」(「あとがき」より)