内容説明
一五~一八世紀,ヨーロッパ文明がまばゆい光を放ち始めたまさにそのとき,「魔女狩り」という底知れぬ闇が口を開いたのはなぜか.その起源・広がり・終焉,迫害の実態,魔女イメージを創り上げた人たち,女性への差別――進展著しい研究をふまえ,ヨーロッパの歴史を映し出す「鏡」としての魔女と魔女狩りを総合的に描く.
目次
はじめに
目次
第1章 魔女の定義と時間的・空間的広がり
第2章 告発・裁判・処刑のプロセス
第3章 ヴォージュ山地のある村で
第4章 魔女を作り上げた人々
第5章 サバトとは何か
第6章 女ならざる“魔女”──魔女とジェンダー
第7章 「狂乱」はなぜ生じたのか──魔女狩りの原因と背景
第8章 魔女狩りの終焉
おわりに──魔女狩りの根源
あとがき
主要参考文献
図版出典一覧
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
56
【基本的要因としては、「魔女妄想」の形成がある】半世紀前、『魔女狩り』の題で同じ岩波新書から出され、当時話題になってわたしも飛びついた記憶がある。袖の、<進展著しい研究をふまえ、ヨーロッパの歴史を映し出す「鏡」としての魔女と魔女狩りを総合的に描く>の文言と、『魔女と聖女』(講談社現代新書)の著者であることから期待値を高め読んだ。<なぜ「ルネサンス」と「宗教改革」そして「科学革命」という、近代の黎明を告げる出来事の起きた、まさにその時代(16~17世紀前後)なのか、という疑問が頭から離れなかった>に同意。⇒2024/04/13
よっち
36
15~18世紀にヨーロッパで「魔女狩り」という底知れぬ闇が口を開いたのはなぜか。その起源・広がり・終焉、迫害の実態、魔女イメージを創り上げた人たち、女性への差別などを総合的に描いた一冊。そもそも魔女とは何か。悪魔との契約や異端セクト化といった前提から、最初は主に年老いた女性が対象だった魔女狩りが、いつどこでどれくらいの規模で行われていたのか、告発・裁判・処刑はどのようなプロセスで行われていたのか、記録から具体的な事例を取り上げていきながら、その原因と背景を考察していくなかなか興味深い一冊になっていました。2024/04/09
さとうしん
11
近世という時代性特有のものとしての魔女狩りのメカニズムを紹介する。魔女狩りは裁判にゴーサインを与える国家や地域の政治上の問題、あるいはジェンダーや、老人と若者、子どもといった世代間の問題とも関係していたことを指摘している。ルネサンスの画家が題材として取り上げることで却って魔女のイメージをステレオタイプ化させてしまったことや、印刷技術との関わり、魔女の判定に関与した大学の罪を取り上げ、魔女狩りは理性的でないから起こったのではなく、むしろ理性の陥りやすい罠にはまったからこそ発生したとまとめている。2024/04/06
ちり
1
最近の研究動向として、世俗面では中央集権・国王主権の国家構築のためにキリスト教道徳の実践を主軸にした共同体の創造が目論まれたこと、宗教面ではプロテスタントとカトリックがどちらも生活を規律化しようという動きを活発化させたことというあたりが注目されており、後者は「社会的規律化」という用語になっている、とのこと。2024/04/22