ちくま新書<br> 倫理学原論 ――直感的善悪と学問の憂鬱なすれちがい

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ちくま新書
倫理学原論 ――直感的善悪と学問の憂鬱なすれちがい

  • 著者名:舟木亨【著者】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2024/03発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480076090

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内容説明

本書は、倫理学を学びたい人、社会の多様な出来事に倫理的問題を見出だそうとする人に向けて、倫理的諸問題と倫理学の関係を斜めに解き明かし、倫理学の全体像を描き出す。まず倫理・倫理学とは何かを整理し、倫理学という学問の日本における受容史を解説。さらに、倫理学のもつ根本問題――倫理の実践はどうあるべきか、真の善を目的とした行動に人々を駆り立ててよいのか――を根源から考察。学問としての倫理学が真に目指すべきものと、倫理学的観点の面白さとを伝える。

目次

はじめに/第一章 倫理とは何か/1 倫理と善/倫理の本質/倫理の意味/「善いこと」と倫理/2 倫理規定/精神と倫理/倫理規定と法律/倫理規定のポジション/法律と倫理/倫理規定の本質/倫理規定と倫理/3 応用倫理/法律と倫理の分離/応用倫理の行き詰まり/胸に手を当てて考える/良識と倫理/4 倫理と道徳/倫理の語源/道徳/現代の徳/道/儒教道徳/モラル/倫理の諸概念/5 倫理的なもの/倫理学の主題/生活の指針/ネット空間/ネットにおける言説/セクハラ/さまざまなハラスメント/バイアス/精神医学/生命政治/病理と倫理/倫理と宗教/第二章 倫理学の歴史/1 西欧の倫理学/道徳なき倫理/功利主義/西欧倫理学の起源/習俗としてのエトス/アリストテレスの倫理学/マキアヴェリの道徳批判/ホッブズとスピノザ/倫理的利己主義/中国と西欧/カントとベンタム/自由/2 わが国の倫理学/輸入された倫理学/西欧倫理学の受容/現代日本の倫理学/これからの倫理学/3 学問について/学問的思考の不在/鹿鳴館主義/知識人たち/学問の未来/4 倫理学の今日/倫理的思考/倫理学書が読まれない理由/真の善の探求/第三章 倫理学の根本問題/1 倫理学は政治なのか?/真の善/哲人王の夢/真理政治/宗教と政治と経済と法律/純粋倫理/2 倫理学は何もできないのか?/倫理学のポジション/学問の倫理/学問と政治/政治と倫理学/3 倫理学は つきなのか?/倫理思想史/きれいごと/言説の善悪/内面なるもの/ /現実性/学問的詐欺/言説の倫理/4 倫理学は手段を正当化するのか?/真と善/目的の真偽と善悪/目的は手段を選ばないか?/存在しない善/目的と手段/自己目的化した手段の善/手段の善悪/手段の本質/5 倫理学は善なのか?/真の善とは何か/真の善を求める悪/倫理と論理/「善い」と述べること/倫理的であることと倫理学の関係/「真の善」と「善の真」/倫理批判の学/第四章 身体の倫理学の基礎づけ/1 体調と倫理/自然的善悪/善悪の意味/体調に影響される判断/身体の倫理学/2 身体/身体観の変遷/前近代の身体観/近代の身体観/心脳一元論/認識と宇宙/ベルクソン的身体/マクロコスモスとミクロコスモス/3 言説としての倫理/さまざまな倫理的言説/言説による倫理的解決/言説の四つのタイプ/記述としての言葉/倫理について語る/4 意識の受動性/倫理的意識/今日の意識概念/意識と明晰さ/明晰さの諸段階/無意識/5 能動性の経験/意識と脳/能動性/与えられる意識/意識と感覚/睡眠と覚醒/記憶/忘却力/過去の占拠/思考に隠されているもの/6 思考と身体/倫理的主体/意識の理由/ぼんやりとした意識/専念できない場合/本能と学習/身体の統合/意識にとっての身体/理性的な行動/7 習慣/習慣という概念/悪い習慣/遊びと訓練/動物と人間/生命と文化/慣習とマナー/精神と生/8 倫理的思考/集団と倫理/寂しさ/倫理的生/あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

tamami

60
そもそも新書の一冊として気軽に手にしたのが間違いの基であった。倫理学原論と謳っているからには、倫理学とは何かが記されているかと思ったのだが、兎に角硬質な文章で、読み通すのが難しい。著者の脳内ではこんな文章が渦巻いているのだろう。けれども、不思議な書物でもある。どの頁を開いても、著者の考えている倫理的な観点や意義の面白さが文章として展開されていて、時にビアスの『悪魔の辞典』のような記述にも出会う。曰く、「徳とは、社会や組織のあり方を決定する特別な立場のひとがいることが前提となったうえで、前近代では支配身分、2024/03/20

ケー

7
タイトルだけ見ると入門書のような雰囲気だけれど、必ずしも入門書とは言えなくて、船木倫理学を一冊書けて語り尽くすといった雰囲気。船木さんの本は初めて読んだけれど、船木さん、倫理学研究者というよりは正に倫理学者だなと思った。身体に注目した倫理論はとても新鮮だった。2024/04/07

sk

4
政治経済などに汚染されない純粋倫理の探求。2024/03/27

zunzun

4
かなり問題のある本である。まず、『月報司法書士』という司法書士向けに倫理学を解説するために寄稿された論文が基になっていることを前提にして読まなければならない。新書にするために加筆訂正されたものが今回の書である。倫理学を学んでいない人向けに書かれたためか著名な思想家の名前などは散見されるものの、大部分が、著者である船木氏による思弁で構成されている。学問的な記述なのではなく、一種の随筆、もしくは哲学的な倫理学であるといってよい。倫理学を学ぼうと思って購入した人は呆気にとられるだろう内容である。2024/03/09

嵐 千里

1
倫理、倫理学者が、改めて倫理とは何かと問う一書。 読者は、その道行に伴走して、思わぬ風景えと誘われる。 タイトルを『原論』としたところがみそ。2024/03/31

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