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内容説明
日本文学は「どうしても翻訳できない言葉」で書かれてきた、と大江健三郎は言う。事実、谷崎も川端も三島も、英訳時に改変され、省略され、時に誤読もされてきた。なぜそのまま翻訳することができないのか。どのような経緯で改変され、その結果、刊行された作品はどう受け止められたのか。米クノップフ社のアーカイヴ資料等をつぶさに検証し、一九五〇~七〇年代の作家、翻訳者、編集者の異文化間の葛藤の根源を初めて明らかにする。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
113
日本の翻訳出版では完訳が当然で、日本人に馴染みのない部分を削除したり要約ですませることはまずない。しかし戦後アメリカでの日本文学紹介では谷崎、川端、三島らの代表作でも当然のように行われ、結末の改変すらあった。逆に日本語文では珍しくない主語や時制の曖昧さは許されず、英米圏読者に受け入れられるよう誰がいつ何と語ったか明確にするよう加筆された。特に会話文では日本独自の性差、年齢差、距離感に満ちた表現の翻訳は難しかったようだ。異なる文化の架橋者たる翻訳者の苦労もわかるが、「翻訳者は裏切り者」なのも事実と言えよう。2024/04/02