ちくまプリマー新書<br> 「叱らない」が子どもを苦しめる

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ちくまプリマー新書
「叱らない」が子どもを苦しめる

  • ISBN:9784480684745

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内容説明

「叱らない」教育に現役スクールカウンセラーが警鐘を鳴らす一冊。なぜ不登校やいじめなどの問題は絶えないのか。叱ること、押し返すことの意義を取り戻す。現在、不登校状態の子どもは小中学校合わせて約30万人。これまでは「無理させず休ませる」支援が主流でしたが、それだけでは改善しない事例が増えてきていると、現役のスクールカウンセラーが警鐘を鳴らします。

目次

はじめに/第1章 子どもの不適応が変わってきた現代/1 不登校の歴史を振り返る/まだ説明可能だった不登校/説明ができない不登校の出現/不登校の多様化・あいまい化/不登校はどんな子どもにも起こるが……/2 「登校刺激を与えず、ゆっくり休ませる」はなぜ効果的なのか?/不登校の子どもたちは強い登校圧力にさらされてきた/「登校刺激を与えず、ゆっくり休ませる」という方針について/「学校には行くべき」と反する気持ちを抑え込む子どもたち/抑え込んだ気持ちが悪さをする/「登校刺激を与えず、ゆっくり休ませる」という方針の有効性/「学校には行くべき」という価値観の意義とその変化/意味がないというわけではないけれど……/3 従来のアプローチでは改善しない事例の出現/従来の不登校支援において大切なこと/従来のアプローチでは改善しない不登校の出現/本書で目指すこと/コラム 不登校はなぜ増えているのか?/第2章 成長に不可欠な「世界からの押し返し」の不足/1 思い通りにならないことに耐えられない子どもたち/「思い通りにならない場面」への強烈な拒否感/「思い通りにならないことを受け容れる」ために必要な経験/不快感を関係性の中で納めていくこと/「世界からの押し返し」が少ない子どもは不適応になりやすい/2 「世界からの押し返し」になっていない大人の関わり/「世界からの押し返し」を外注する/子どもの現実を「加工」する/子どもの環境を「操作」する/不快感から目を逸らすための「仲良し」/「押し返し」ができない教師/3 ネガティブな自分を受け容れられない子どもたち/私に「 」を付けないで!/不登校の主因になり得る「ネガティブな自分を認められない」という特徴/学びの前提は「未熟であることへの不全感」/子どもたちが抱く「万能的な自己イメージ」/こころの奥底にある自信の無さ/4 学校で見られる具体的な不適応パターン/環境に対して過剰に適応しようとする/他の子どもが叱られているのが怖くて学校に行けない/他者を低く価値づける傾向と絶え間ない自己否定/苦しい状況を「操作」する/子どもの問題を抱えられない親の反応/コラム 反抗期って必要?/第3章 子どもの「不快」を回避する社会/1 何が子どもたちの不適応を生み出しているのか?/本書で「自己愛」という表現を用いない理由/従来の仮説との相違点について/社会背景が子どもたちの不適応を生み出している可能性/2 子どもを不快にできない社会/学校が変わることの意味/「要らない不快」と「成長のための不快」/「褒めて伸ばす」が変質してしまっている/「やりたいこと」と「できること」/社会の風潮が学校や家庭に降りてきている/3 外界と調和することへの拒否感/「なまはげ」が教えてくれる大切なこと/「外界と調和するつもりがない」というマインド/個性とは他者との関係の中で滲み出るもの/only oneとone of them/4 外罰的な風潮の影響/「恥ずかしい」から「怖い」への推移/他責的なスタイルで生きていくリスク/「自由」と「責任」の連動性を学ぶこと/コラム それって誰の問題?/第4章 子どもが「ネガティブな自分」を受け容れていくために/1 「ネガティブな自分」を受け容れる/支援の目標を考える/「ネガティブな自分」と向き合う/「ネガティブな自分」に向き合わせるための要点/向き合わせることが効果的なのは期間限定である/2 親子関係をもとにしたアプローチ/親子関係から始めねばならないが、母屋を壊してはならない/子どもの状態像に対する親の価値観を確かめる/親が子どもの心理的課題を「正しく認識する」ことの価値/支えとしての「甘え」/「甘え」と「甘えではないもの」の弁別が絶対に必要/支えとしての「安全な対話」/3 本人との「付き合い方」/カウンセリングに来ることの意義/カウンセリングでの本人との「付き合い方」/4 学校との関係がこじれやすい家庭への対応/どんな事例を想定しているのか?/学校とのやり取りで見える特徴的なパターン/学校での対応/経過や予後について/コラム You MessageとI Message/第5章 予防のための落穂拾い/1 その他の不適応との関係/従来の不登校/ゲームにのめり込む/発達障害との弁別/身体症状との関わり/2 支援の落とし穴と予防について/見逃しやすい落とし穴/家庭でできる予防の例/学校でできる予防の例/3 最後に大切なことを/子どもたちに関わる大人たち/「誰が支援を行うのか」という視点/コラム スクールカウンセラーは何をしている?/おわりに/引用文献・参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

よっち

38
なぜ不登校やいじめなどの問題は絶えないのか。叱らない教育に現役スクールカウンセラーが警鐘を鳴らし、叱ること押し返すことの意義を取り戻す一冊。現在、不登校状態の子どもは小中学校合わせて約30万人。これまでは「無理させず休ませる」支援が主流だったものの、不登校の傾向も変わってきていてそれだけでは改善しない事例が増えてきている。成長には思い通りにならないことを受け容れる経験が必要で、少ない子どもはネガティブな自分を受け入れられず、不適応になりやすい傾向がある。その辺りは意識して向き合っていく必要がありそうです。2024/02/28

ムーミン

23
世にあふれる手っ取り早く手に入る情報に極端に左右され、目の前の事実に丁寧に向き合い、情報を参考にまずは自分で考えてみることがおろそかになっている日本の現状。これが子どもにしわ寄せがいっていることが許せないというのが強い思いです。2024/03/31

そちゃ

7
不登校の現代的要因にアプローチした専門的知見が得られる本。「多様性」への違和感は、本書で言う「押し返しの無さ」にあるのだと自分なりに解釈できてスッキリする。私はこうしたい、こう思う、が尊重されすぎて、枠組みの意味もなさないことが多い。学校さえも…。我慢って悪のイメージついているけれど、本来自分と世界を擦り合わせていく中で必須だよね、と。広く教育に携わる身として、押し返しの機能の実行力と、その説明責任を担っていくべきなんだなと強く実感した。全教育関係者と人の親になる人たちに読んでもらいたい。2024/03/25

ソーシャ

4
SCの経験豊富な著者が自らの臨床経験をもとに、子どもの要求を全て受け入れることを批判し、あるべき世界からの「押し返し」について論じた新書。キャッチーなタイトルですが、同業者向けと思われる議論など内容は深めで、誤読されるリスクも高そうな本です。ただ、地域性もあると思うんですが、わたしの地域は著者が描くほどには子どもに甘くないんですよね。理念型として例を出しているのかもですけど(あと、世界からの「押し返し」の方法が「叱る」である必要はないような気がしたのですけど)2024/03/14

totuboy

3
コロナ明け、不登校者の数が過去最高となったのはまさにこの筆者の考察通り。(と思う)結局、無理に学校に行かなくてもよくなったこと、そこで学校側が強く出れば、保護者などがクレームを言ってくることで、委縮してしまっていることがあげられると思う。筆者の言う通り、「世界から押し返される」経験が未熟な子供が増えていることも大きな問題で、個の思いを大切にする中で、環境に自分を合わせられない子供が急属していると感じる。2024/02/15

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