内容説明
社会思想は、その時代の社会がかかえる問題を解決しようと、思想家が格闘しつつ生みだすものである。本書はルネサンス以降の歴史を、3つの流れで捉える。すなわち、民主主義・資本主義社会はいかなる思想的過程で形成されたか、近代社会に顕在化した問題を解決するためどのような社会思想が生み出されたか、そして20世紀以降どのような問題が発生したか。著者が指摘する「現代社会の問題」とは、個人の自立性を押しつぶす官僚制化・大衆社会化・管理社会化であり、さらに資本主義社会の矛盾・弊害の克服を目指したはずの社会主義諸国の行き詰まりまでを含む。長らく読み継がれてきた簡潔で定評ある入門書。
目次
はしがき/第1章 近代的人間の登場/1 新しい型の人間の特徴/伝統的な価値や意味の 奪/計算ずくの態度/個人の主体性/自然科学と技術/「万能人」の理想/2 マキアヴェリの社会思想/政治的実務家としての経験/現実主義的方法/人間の本性/権謀術数主義の問題/ヴィルトゥと国民国家統一/共和政と君主政/マキアヴェリの社会思想の問題点/紹介 ボッカチオ/アルベルティ/ピコ・デラ・ミランドラ/レオナルド・ダ・ヴィンチ/ガリレイ/メディチ家/サヴォナローラ/第2章 個人の自立と自由/1 ルターの宗教改革/信仰と個人の自立/信仰義認論/宗教改革運動の展開/職業召命観と社会改善案/キリスト者の自由/農民戦争とルター/2 カルヴィニズムの特徴/カルヴァンの立場/二重預定説/教会組織論/紹介 エック/ミュンツァー/第3章 民主主義思想の誕生/1 『リヴァイアサン』誕生の背景/ピューリタン革命/『リヴァイアサン』の誕生/2 ホッブズの〈社会契約論〉/自然権と自然法/社会契約と公共権力/二重の立場/3 神による平等な人間の創造──レヴェラーズの社会思想/紹介 ベーコン/コーク/第4章 民主主義思想の発展/1 イギリスの市民革命──名誉革命とジョン・ロック/名誉革命/ロックとピューリタニズム/2 ロックの社会観・国家観──自然状態/『統治論二篇』/自然状態/信託的権力/3 ロックの人間観──所有権・私有権の神聖不可侵/所有権の基礎づけ/所有権の限界/紹介 ハリントン/第5章 啓蒙思想の展開とロマン主義/1 ロックから啓蒙思想家へ──フランスの人民主権と百科全書派/2 ルソーの『社会契約論』/『人間不平等起源論』/社会契約と一般意志/自由への強制/直接民主制の問題/3 カントの「啓蒙」からロマン主義──ドイツでの開花/ドイツでの上からの啓蒙/ロマン主義の登場/紹介 ヴォルテール/ディドロ/ダランベール/カント/第6章 「市民社会」への反省/1 スミスの「労働価値説」/労働が富の源泉/初期未開の社会/2 神の「見えざる手」──自然的自由の制度/「商業社会」での労資対立/経済活動の自由/3 ヘーゲルの国家観・社会観/欲望の体系としての「市民社会」/不平等と分裂/福祉行政と職業団体/紹介 ケネー/スチュアート/第7章 初期社会主義思想/1 初期社会主義の台頭──産業革命とラダイツ運動/2 社会主義と協同組合の父──ロバート・オーウェン/性格形成原理とニュー・ラナーク工場/社会主義と協同組合の父/ニュー・ハーモニー村/3 オーウェン主義の浸透──協同組合運動と労働運動/4 サン‐シモンと〈産業者中心社会〉/産業主義/新生産体制/第8章 マルクスの人間解放思想/1 ヘーゲル哲学批判からフォイエルバッハへ/青年ヘーゲル学派/フォイエルバッハの「現実的人間主義」/2 マルクスの〈疎外〉の四つの形態/社会的現実における「人間の自己疎外」/人間の人間的解放/労働の疎外構造/生産行為と類的存在からの疎外/人間の人間からの疎外/紹介 シュトラウス/リカード/第9章 マルクスの共産主義思想/1 マルクスの「共産主義」──共産主義の三段階/2 マルクスの歴史観/唯物史観の形成/歴史の四契機と意識のあり方/社会的分業と私的所有と疎外/3 『共産党宣言』──共産主義運動の実践/共産主義の実践的前提/革命の具体的方策/国家の死滅と自由な結合社会/4 『資本論』──剰余価値の源泉/紹介 エンゲルス/第10章 フェビアニズムと社会民主主義/1 フェビアニズムの登場とその特徴/フェビアン協会の結成/フェビアニズム/「労働党」の成立/2 ドイツにおける労働運動/「社会主義労働党」の結成/「社会民主党」の発展/3 ベルンシュタインの「修正主義」/「修正主義」の哲学/「修正主義」の政治経済学/紹介 ショー/ジェヴォンズ/ラッサール/リープクネヒト/ビスマルク/カウツキー/第11章 マルクス主義思想の展開/1 ナロードニキ主義からレーニン主義へ/ナロードニキ主義の展開/ナロードニキ主義の克服/ボルシェヴィキの政治路線/2 レーニンのプロレタリア独裁/帝国主義の段階/一国社会主義革命/プロレタリア独裁とソヴィエト/3 ルカーチによる階級意識の問題提起/4 経済領域における物象化/物象化の本質/労働過程の物象化と抽象化/5 人間意識における物象化/紹介 ゲルツェン/チェルヌイシェフスキー/プレハーノフ/第12章 合理化と官僚制の問題/1 合理化の問題/合理化と資本主義/生活態度の合理化/資本主義の精神/職業観念の解明/合理化された世界/2 官僚制の問題/支配の「正当性」/近代的官僚制/生きた機械としての官僚制/時代の宿命の克服/第13章 大衆社会の様相/1 機能的合理性──マンハイム/産業的大衆社会の病状/「社会的不均衡」と機能的合理化/否定的民主化/自由のための計画/2 権威主義的性格──フロム/自由からの逃走/権威主義的性格/3 社会的性格──リースマン/紹介 フロイト/第14章 管理社会の本質/1 大企業体制/現代社会の変化/大企業体制の特徴/2 計画化推進とテクノストラクチャー/産業における計画化/テクノストラクチャー/新しい産業国家/3 組織化された資本主義──三つのシステム/後期資本主義のモデル/経済システム/行政システム/正統化のシステム/後期資本主義の危機傾向/コミュニケーション的合理性/紹介 ケインズ/第15章 日本の近代化と社会思想/1 啓蒙思想と自由民権運動の開花/文明開化と明六社/天賦人権論と実学/自由民権運動/東洋のルソー中江兆民/2 社会主義と超国家主義の発達/社会主義思想の受容/「平民社」と『平民新聞』/「日本社会党」の結成と分裂/大正デモクラシー/超国家主義の思想/紹介 森有礼/板垣退助/大隈重信/安部磯雄/堺利彦/吉野作造/北一輝/第16章 現代日本社会の諸課題/1 克服できていない二〇世紀の課題/民主主義の問題/合理化と官僚制と人間疎外の問題/大衆社会と管理社会の問題/2 情報化・消費化社会の展望/自立システムとしての消費社会/環境問題/南北問題/情報化・消費化社会の核心/参考文献/文庫版解説 社会思想史は何を物語るか 植村邦彦/事項索引/人名索引/書名索引
感想・レビュー
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KAZOO
to boy
Ex libris 毒餃子