ちくま新書<br> 古代中国王朝史の誕生 ――歴史はどう記述されてきたか

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ちくま新書
古代中国王朝史の誕生 ――歴史はどう記述されてきたか

  • 著者名:佐藤信弥【著者】
  • 価格 ¥1,034(本体¥940)
  • 筑摩書房(2024/01発売)
  • ポイント 9pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480075833

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内容説明

現代にも通じる歴史書と評価される司馬遷『史記』だが、執筆には、それより前に記録され、 伝えられたものの蓄積がある。 当然のことながら、 文字がなくてはならないし、 竹簡などの記録メディアが必要。さらに、それがいつの出来事かを記述するためには、 国王の治世や暦等を根拠にした年号もあるほうがいい。 正史は権力者の歴史認識と思想を汲むため編者は命懸けだが、すでに古代中国においても過去の事象からいまの問題を見出す態度の萌芽が見られる。 出土史料を繙きながら、『史記』に結実する記録への執念や歴史観の興りをたどる。

目次

まえがき/本書の構成/序章 記録のはじまり──殷代/甲骨文の読み方/記録としての卜辞/卜辞以外の甲骨文/殷代の竹簡をめぐって/第一部 歴史認識/第一章 同時代史料から見る──西周~春秋時代Ⅰ/1 記録文書としての金文/金文とは/製作縁起から記録文書へ/西周時代の書/史官の登場/2 王の歴史、臣下の歴史/酒に滅んだ殷王朝/天命を膺受し、四方を敷有す/臣下の家の歴史/定型表現で語る/創られた系譜/3 回顧される西周王朝/周の東遷/西周王朝の正規軍/正統性を示す六師/康宮と「康王独尊」/歴史認識の中の康宮/4 天命を受ける諸侯/受命の独占の崩壊/王とともに受ける天命/独自の受命認識/昭王南征をめぐって/南征に関係する土地/周と淮夷/軍権の象徴としての鉞/第二章 後代の文献から見る──西周~春秋時代Ⅱ/1 「神話なき国」の叙事詩/古代中国に叙事詩は存在したか/『詩経』の成立年代と構成/「神話なき国」の神話/感生説話/農耕と定住/古公の国造り/戦いの詩/2 祖先神話とその承認/春秋人と父祖/楚と殷周王朝/「政治的」な呉の系譜/中原諸国の事情/失われた祖先の後裔たち/第二部 歴史書と歴史観/第三章 歴史書と歴史観の登場──戦国時代/1 説話で語られる歴史/戦国時代と諸子/『春秋』について/『左伝』は『春秋』の伝か?/重層的に形成された『左伝』/『春秋』に対する批評/賢婦人としての武姜/城濮の戦いに備えて/『左伝』に見える説話との比較/改変される説話/美女の運命/沈黙する息 /紀事本末体/歴史から教訓を読み取る/『春秋事語』/2 歴史から道理を知る/春秋の筆法/元年春、王の正月/断爛朝報/『公羊伝』の説話/第二の『公羊伝』として/『春秋』以外の年代記/西晋時代の出土文献/露悪的な『竹書紀年』/『竹書紀年』は真実を伝えているか/3 諸子百家の歴史学と歴史観/孔子の歴史観──夏殷周三王朝の交代/孟子の史料批判──尽く書を信ずれば/孟子の歴史観──一治一乱/墨子の歴史観──万人の万人に対する闘争/韓非の歴史観──世、異なれば/『呂氏春秋』の歴史観──五行相勝説/第四章 そして『史記』へ──秦~前漢時代/1 古代の書籍の形態とあり方/統一帝国の成立/紙以前の書写媒体/帛書と簡牘/書籍簡の書題・篇題/随意に付けられる書題/劉向・劉 の校書事業/2 焚書坑儒の再検討/焚書のおこり/なぜ焚書が行われたか?/焚書の影響/焚書の実際/儒者への弾圧とされた坑儒/3 『史記』の編纂/秦から漢へ/経書から史書へ/『史記』の構成/封禅と司馬談/司馬談の構想/司馬遷の構想/発憤著書/4 始皇帝、そして武帝/始皇帝の出生譚/始皇帝の遺言/始皇帝に重ね合わせられる武帝/残された謎/終章 大事紀年から年号へ/本書のまとめ/殷代の暦と紀年/大事紀年の登場/大事紀年から年代記へ/年号の誕生/年号と歴史的評価/あとがき/主要参考文献/図版出典

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

へくとぱすかる

50
歴史書は単にできごとを記録するだけでなく、事象をどう捉えるかという著者・編者の見方が込められる。長らく伝世資料に依存して研究されてきた古代史も、考古学の進展にともない、出土資料によって修正されていく。それが現在では、まるで写真のフィルターをかけかえるほどの感触の違いを感じる。イメージの変身である。著者は出土資料とはいえ歴史的真実ではなく、当時の歴史認識・歴史観を表すものだと指摘している。祖先が王に封建されたと言っても、当時そういう建前で国を成立させていたことを記録したということ。注意すべき点だと思う。2024/01/16

よっち

32
現代にも通じる歴史書と評価される司馬遷『史記』の執筆には、記録され伝えられた蓄積があった。出土史料を繙きながら、記録への執念や歴史観の興りをたどる一冊。甲骨文字や記す竹簡などの記録メディア、国王の治世や暦等を根拠にした年号の成立。権力者の歴史認識と思想を汲む編者の存在も取り上げながら、西周から春秋戦国時代を同時代資料から見た金文、後代の文献としての詩経や史記、諸子百家が生まれた戦国時代の説話から語られる歴史、そして統一国家成立から焚書と紙の誕生から史記の編纂に繋がっていったのかなかなか興味深かったですね。2024/02/06

MUNEKAZ

14
『史記』以前の古代中国における歴史叙述について、金文や竹簡などに拠りながら解説した一冊。単なる備忘録ではなく、なぜ歴史を書くのか。それは「いま」に続く過去の事象を描くためであり、起点が現在にあるのがポイントだと思う。「いま」を説明するために過去があり、それには「正確さ」ではなく、因果を証明できる「正しさ」が求められる。『史記』が儒教の経書に含まれていたこと、また始皇帝批判の体で今上の武帝をあてこすっていることがその証左。「いま」があるから歴史があり、「いま」の価値判断から中立の歴史などありえないのだ。2026/01/21

電羊齋

13
甲骨文、金文、竹簡など出土文献、ならびに伝世文献から探る古代中国における歴史認識と歴史観の様相が興味深い。本書では、歴史認識と歴史観の時代と立場による変化を例に挙げ、歴史と(それを記録し、解釈し、記述する)人間は常に変化し、動いているということが示されている。さらにそこから現在の政治や社会に対する問題意識から過去の事象を議論する、あるいは過去の事象から現在の問題を見出す意識の萌芽を見いだしている。このあたりは著者も引用するE・H・カー『歴史とは何か』での指摘と相通じていて、非常に面白かった。2024/01/22

赤白黒

6
甲骨文に始まり『史記』に結実する、中国における歴史書編纂の起こりを辿ったもの。西周史の専門家の著作だけあって、先秦時代の主要な伝世文献や出土史料の詳しい解説は非常に読み応えがある(他方、『史記』についてはほぼ先行研究の引用にとどまる)。西周金文の時点で既に作成者の「歴史認識」を表明する二次史料の側面があることに驚いた。中国における記録へのこだわりは、かくも分厚い伝統に裏打ちされているのだ。終章では年号の起こりについて触れられており、今なお年号を奉ずる日本人としては知っておきたいところ。2025/02/21

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