内容説明
マックス・ウェーバーとニクラス・ルーマン――科学技術と資本主義によって規定された産業社会の謎に挑んだふたりの社会学の巨人.難解で知られる彼らが遺した知的遺産を読み解くことで,私たちが生きる「この」「社会」とは何なのかという問いを更新する.社会学の到達点であり,その本質を濃縮した著者渾身の大作.
目次
序章 現代社会学の生成と展開
一 二人の学者と二つの論考
二 ウェーバー像の転換
第一章 「資本主義の精神」再訪──始まりの物語から
一 ウェーバー家と産業社会
二 二つの戦略ともう一つの資本主義
三 「禁欲倫理」の謎解き
四 会社と社会
第二章 社会の比較分析──因果の緯糸と経糸
一 研究の全体像を探る
二 会社制度の社会経済学
第三章 組織と意味のシステム──二一世紀の社会科学へ
一 「合理的組織」の社会学
二 組織システムへの転回
三 決定の自己産出と禁欲倫理
四 ウェーバーとルーマンの交差──因果と意味
終 章 百年の環
あとがき
ウェーバーの主要な著作・論文の年譜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
82
私はウェーバ―の著作や関連本は昔からかなり読んできてあまり違和感がないのですが、ニクラス・ルーマンという人物の業績などはまるっきり知りませんでした。どちらかというと実務者にとってはルーマンの言わんとしていることの方がわかりやすいということのようです。ウェーバーがどちらかというと中心に据えられているようですが私はルーマンを今後どこかで読んでみようと思う気になりました。2024/01/26
よっち
27
マックス・ウェーバーとルーマン。科学技術と資本主義によって規定された産業社会の謎に挑んだふたりの社会学の巨人が遺した知的遺産を読み解くことで、この社会とは何かという問いを更新する一冊。資本主義の精神を書いたウェーバーが書かれた時代のウェーバー家と産業社会の状況、閉鎖的経営の大工場と商会の分散型生産という二つの戦略ともうひとつの資本主義の可能性。それをルーマンのコミュニケーションシステムに繋げて、プロテスタントの論理だけでなく組織のあり方も意識していたウェーバーの考え方を見直す興味深い一冊になっていました。2023/12/25
きゃれら
22
「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」の読まれ方が我が国では固定観念的で歪んでいたのを正す、痛快な解説本だ。社会学を学ぶ人だけでなく、組織人として壁にぶつかって様々なビジネス書を読み実践してもうまくいかないと悩んでいる人が読むべき本ではないか。ウェーバーの考えが決して宗教的ではないと解く。マルクス経済学の根本的な問題点もこの本から考えることができそうだ。著者が高校の同級生というのが本書を手にした主な動機だが、こんなに面白くビジネスに役立つ本とは思っていなかった。ウェーバーを読む意欲が湧いてきた。2023/12/17
逆丸カツハ
19
非常に面白かった。近代的な組織や社会をトップダウンの規則の塊として見ることは、おそらくは常に変動する決定の体系のごく一面かつ短時間のスナップショットとして切り出す行為であり、それでは包括的理解に至ることができないのだろう。もしも、人にマックス・ウェーバーのプロ倫を紹介することがあれば本書との併読を勧めたいと思う。2024/01/12
oooともろー
8
2024新書大賞第10位。ウェーバーからルーマンへ。偏った読み方をされてきたウェーバーを読み直し、解決できなかったことをルーマンが引き継いだという流れ。難解なところもあるが、所々でまとめてくれるのでついていける。これまでのウェーバー像が根底から覆された。2024/04/13