内容説明
藤原家の三男に過ぎなかった道長は、なぜ摂政に昇りつめ栄華を極めるにいたったのか。貴種の妻を求めた人生の戦略、呪詛におびえる臆病さ、正妻と紫式部との同居による悶着……一人の生活者であった道長は誰を恐れ、誰を愛したのか。その人生、心の動きをたどる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さぜん
53
面白い。道長の功績ではなくその心の内を探りその人間像に迫る。歴史資料、文学資料特に心情を知るための和歌からアプローチし、平易でわかりやすく、時にユーモアある文章で道長とその時代の複雑な人間関係を描く。末っ子が栄華を極めたのは「強運」の持ち主だという解釈に妙に納得。そして常に人の不幸を踏み台にした故、恨みを持った怨霊に怯えていた。道長がどんな思いで生き死んでいったのかまで思いを馳せる機会を与えてくれた本作に感謝。大河ドラマを更に楽しめそうだ。2024/03/26
さつき
44
藤原道長とはどんな人だったのか?本人の書いた『御堂関白記』や同時代を生きた藤原実資の『小右記』、藤原行成の『権記』などの日記や『紫式部日記』『栄花物語』に描かれた姿を時系列に沿って追っていく。末子らしい要領の良さや、自らの「幸ひ」を喜びつつ、それを後ろめたく思い「心の鬼」を抱いていく極めて人間らしい様子が克明に描かれていて読み応えありました。望月の歌の意味もよくわかり、この時代の貴族の考え方、心の機微が見えてきたようで、とても面白かったです。2024/04/30
mitubatigril
16
源氏物語がずっと好きで、「あさきゆめみし」から始まり色々な現代語訳の作品を読み まさか大河ドラマで作者の紫式部が主役としてとりあげられるとは思いもよらず。 そして大好きな作家さんが関連作品が沢山出るのではとつぶやきを読み その通りになってきているので改めて感心してしまう。そして道長の作品として小説としては読んでいたが学術的にはみたいな作品は初めてで知らない事が改めて知る事が出来 また有名な和歌の解釈には成る程かと思い 今年一年色々な発見の年になっていくんだろうなと思う。 2024/02/06
ときわ
14
道長とはどういう人だったのか?たくさんの資料(貴族たちの日記、物語、エッセイ)に当たりながら山本先生がひも解いてくださる。腹黒いイメージがある道長だが、分かりやすい性格でもある。オーナー一族が経営してる会社で末っ子のため跡継ぎになれなかったはずなのに、棚ぼたで社長の座が転がり込んだ。それは妻の実家のおかげでもあった。妻には頭が上がらず、幸いを授けてくれる娘だって大事。だけどうっかり自分の力だと言ってしまい、にらまれご機嫌を取る羽目に。今でもどっかに居そうな人。一条院の葬儀はショックだった。コメントへ。2024/02/01
みよちゃん
11
紫式部関連で手にした。今までと違う面があり、作者の経歴を見て、文学プラス社会学の様なものを感じた。また八咫烏の望月と重ねた様な雰囲気もあり、面白かった。2024/04/20