内容説明
風、雲、雨、雪、台風、寒波……。日々変わる天気は、「大気の大循環」と呼ばれる地球規模の巨大な循環システムの、極めてミクロな表現でしかありません。「大気の大循環」は赤道付近に大量に供給された太陽エネルギーが、対流や波動によって高緯度に供給される大気のシステムで、大気の誕生以来、営々と続いている地球規模の現象です。大気の大循環によって地球上のそれぞれの地域の気象・気候が決定され、さらに、砂漠や森林、ステップやサバンナといった地上の状態も大気の大循環の結果として形成されます。ですから、気象に興味がある人なら、是非とも理解しておきたい気象学の基礎でもあります。
本書では、大気の大循環を構成する偏西風、貿易風、偏西風波動、ブロッキング高気圧、さらには低緯度から高緯度への巨大な流れであるハドレー循環、フェレル循環、極循環、ロスビー波などを解説するとともに、大気の大循環に最も大きな影響を与えている「コリオリの力」を、高校生でも納得できる形で解説します。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
60
地球大気などの温暖化(沸騰!)が喧伝される中、ここはやはり専門家の本を読むに限る。一時期は温暖化を疑問視する向きもあったようだが(トランプ元大統領がもしトラになったらやばそう)、今では科学者には疑う人はいないか。 2024/02/12
kk
18
図書館本。名うてのサイエンス・ライターによる、地球規模の大気大循環についての一般向け概説書。地球の熱収支の話を皮切りに、気圧傾度力、コリオリの力、ロスビー波、バドレー循環、偏西風波動などなど、気象に関わる基本的な事象・概念の考え方をざっくり解説。前に読んだ同著者による海流の本がとても分かりやすかったので、この本にも同じ程度のとっつき易さを期待したのですが、今度はkkにはちょっと難しかったかも。でも、気象学のあれこれが要領良く散りばめられていて、然るべく勉強になりました。2023/12/23
hatman
10
地球規模での風の流れなどをマクロに概要をつかめる良著。地球は、原因が結果・結果が原因を作る複雑な非線形の大気循環システム。いくらシミュレーションが発達しても地球規模で初期値を与えることは難しいので「確からしさ」でアンサンブル予報をする。大気中の水分が熱源で積乱雲を作る原因、高気圧で空気が圧縮されて高温・乾燥(フェーン現象)状態になる。影響度の小さいパラメータを考慮しないで本質を抽出する省く学問。地学面白い。 2024/01/02
中島直人
8
(図書館)完全に分かったと言うのには、気が引けるレベルではあるけれど、部分的にいくつか理解が追いついたところもあり、気象について考える上でのフレームワークを増やすことが出来た。2024/09/07
coldsurgeon
7
気象学を地球規模で学ぶためには、物理学とくにニュートンの運動方程式の理解が必要だ。50年以上前の知識を呼ぼ起こし、必死に読んでみたが、どの程度理解できたかわからない。しかし、コリオリの力というのが、見かけの力であることは理解できた。近年の異常気象は、地球温暖化の影響があるのは確からしいが、それがすべての原因ではないようだ。気象は完全に予測することはできず、予測はある程度の確かさで示すことが出来るだけだ。読みがいのある科学書でした。、2024/06/13