内容説明
☆2023年本屋大賞受賞作 シリーズ最新作☆
第20回本屋大賞受賞作『汝、星のごとく』続編
花火のように煌めいて、
届かぬ星を見上げて、
海のように見守って、
いつでもそこには愛があった。
ああ、そうか。
わたしたちは幸せだった
のかもしれないね。
『汝、星のごとく』で語りきれなかった愛の物語
「春に翔ぶ」--瀬戸内の島で出会った櫂と暁海。二人を支える教師・北原が秘めた過去。彼が病院で話しかけられた教え子の菜々が抱えていた問題とは?
「星を編む」--才能という名の星を輝かせるために、魂を燃やす編集者たちの物語。漫画原作者・作家となった櫂を担当した編集者二人が繋いだもの。
「波を渡る」--花火のように煌めく時間を経て、愛の果てにも暁海の人生は続いていく。『汝、星のごとく』の先に描かれる、繋がる未来と新たな愛の形。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
213
私は、幸せなのだろう。寄せては返す波に揺られて、大波を被ったり、ただ凪に身を任せたり、時には溺れそうだった時もあるが、今たしかに幸せな人生を生きて来たのだと思う。幸せは自分の心が感じるのだ。まさか続編が読めるなんて思わなかった。あぁ北原先生・・の『春に翔ぶ』と、あれからの『波を渡る』間に櫂の担当編集者2人の『星を編む』の3編。順番も良かった。北原先生と暁海の今を読めて満ち足りた読書になった。作者に感謝したい。2023/11/28
パトラッシュ
208
早世した櫂への思いに囚われた関係者の背景が語られる。あれほど北原先生が他人に献身的だったのは、両親の思いを受け継いでいたからだった。櫂を救えなかった編集者は、贖罪のため困難を乗り越えて遺作出版に奔走する。誰よりも深く傷ついた暁海は、血のつながらない北原の娘との生活に癒されていく。“孫”であるセレーナが「わたしのやりたいことをする」と高らかに宣言した時、必死に生きてきた自分たちは幸せだったと暁海が確信する瞬間にはまぶたが熱くなった。あまりに救いのない結末を迎えた前作の後、今ようやく救いがもたらされた思いだ。2023/12/07
のっち♬
170
『汝、星の如く』のサイドストーリー3編。『春に翔ぶ』の古典劇設定は根幹からファンタスティックに浮遊させる。表題作は編み出しに奔走する出版業界への労い話、舞台裏の人とて輝ける星。「歪こそが愛の本質」の暗示は『波を渡る』へ通じる。文明人が集まればスタンダードや認識的濃淡の発生は不可避。観念ごと追い遣って自立を謳歌する暁海に対して、草介は重みを認識し折り合いをつける現実主義。自意識を総動員して価値観の新しさや定型外に過度に固執するのは自由でも個性でもないし、罪悪感を拗らせもする。相性や分担面で二人は案外古典的。2023/12/02
おしゃべりメガネ
122
本屋大賞受賞作『汝、星のごとく』のまさかまさかの続編スピンオフです。3編からなる構成で、オープニングは「北原」先生の過去の話。これがまたなかなか切なくて、さすが凪良さんって仕上がりです。真ん中は編集者お二人の話で、秘めていた名作にかける情熱を注ぐ姿に胸をうたれます。ラストは「暁海」と「北原」先生のその後の話で、純然たる続編が今ここに綴られています。とにかく瞬く間にあの『汝~』の世界観に誘われ、本作の持つ'吸引力'はレベルが異次元であり、続編の名に恥じない素晴らしい作品でさした。『汝~』を再読しなくては。2023/12/01
もぐもぐ
122
「汝、星のごとく」の前日譚と後日譚そしてスピンオフの三編ですが、二冊合わせて一つの大きな物語が完成するような読み心地でした。北原先生の若き日の苦悩と決断、そして優しい嘘に涙が溢れます。櫂が他界して後のみんなが紡ぐ話も素敵。十年、二十年と歳を重ねる毎に背負った荷物を降ろしてゆく暁海と北原先生。とっても繊細だけど力強い、前作と並ぶ素晴らしい本でした。感動と同時に物語の完結の寂しさが押し寄せてやっぱり涙。2023/11/11