内容説明
「福音の列車が、やっと日本にも来る。このやかましく、血なまぐさい戦闘の騒音とともに」
国と国の歴史が激突するその瞬間、その時代を活写した5つの物語。
明治維新の後、アメリカの海軍兵学校に留学した佐土原藩主の三男・島津啓次郎。彼はスピリチュアル(黒人霊歌)と出会い、これにぞっこんに。しかし、歌うにはソウルとガッツが必要だと言われる。「ゴスペル・トレイン」
上野戦争で死に損ない、妻と二人で「虹の国」ハワイへ移住して再起を図ろうとした伊奈弥二郎。待っていたのはサトウキビ農場での重労働だった。威圧的な白人農場主たちに、弥二郎とハワイ人労働者のエオノはストライク(労働争議)を決行する。「虹の国の侍」
第一次大戦後、日本が委任を受けて統治していた南洋のパラオにて。海軍大尉・宮里要は諜報目的で潜入した米軍将校・エリスの死体を検分したが、旅券からは肝心の顔写真が剥ぎ取られていた。「南洋の桜」
シベリア出兵にて、どうしても従えない命令を忌避して脱走兵になった、騎兵一等卒・鹿野三蔵。彼はモンゴルで、黒旗団(ハラ・スルデ・ブルク)という馬賊団に参加。生まれや人種を越えて、自らの国(ウルス)を探そうとする。「黒い旗のもとに」
神戸で生まれ育ち、祖国のためにインド国民軍婦人部隊、ラーニー・オブ・ジャンシー聯隊に志願した、少女・ヴィーナ。元サラリーマンの陸軍少尉で、インド独立指導者のチャンドラ・ボースに心酔する青年・蓮見孝太郎。インパール作戦で、近くて遠い二人の人生が交錯する。「進めデリーへ」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
196
外国との関わりとしての日本史に埋もれた日本人の姿を描く5短編。米国留学中にスピリチュアル(黒人霊歌)を学びソウルとガッツを得た、佐土原藩島津啓次郎が参加する西南戦争。製糖工場て働く元武士が見るハワイ王国の終焉。南洋パラオでの米国との諜報合戦。満州国当時のモンゴルを駆ける元脱走兵。インパール作戦とインド独立運動。そこには確かに影の英雄がいた。歴史に翻弄される人々の姿が、変わらぬ熱さで語られる。2024/05/20
starbro
172
川越 宗一、5作目です。明治維新から第二次世界大戦敗戦までのクロニクル、読み応えのある連作短編集でした。一つ一つの物語は良いのですが、5つ連なったことによる相乗効果があまり感じられませんでした。其々を独立させて、長編にした方が好い気がします。 https://www.kadokawa.co.jp/product/322112001254/2023/12/13
モルク
103
明治以降の海外での戦争、独立運動にかかわった日本人の視点で描く5話の短編集。西南戦争とアメリカの黒人運動をゴスペルを通じて描く「福音列車」刀を捨てハワイに移住した夫婦と独立を求める現地の人々の「虹の国の侍」パラオでの海軍大尉「南洋の桜」脱走しモンゴルの馬賊となる日本兵「黒い旗のもとに」インパール作戦とインド独立の「進めデリーへ」。いずれも秀逸であり重厚な作品。読み終わるのが惜しかった。表題作が一番のお気に入り。2024/02/09
アーちゃん
53
西南戦争とアメリカの黒人霊歌「ゴスペル・トレイン」、上野戦争後に食い詰めてハワイへ移住する夫婦「虹の国の侍」、第一次世界大戦後の日本統治下にあるパラオで米軍将校を探す海軍大尉「南洋の桜」、シベリア行きが嫌でモンゴルの馬賊となる脱走兵「黒い旗のもとに」、インパール作戦とインド独立を日本人と神戸育ちのインド人少女の視点で描く「進めデリーへ」。戦争と海外に絡む日本人を時系列順に描いた川越宗一さんの短編集。史実を基にした重厚な作品集は読了に時間がかかったが良作揃い。弥二郎の妻たかとインドの少女ヴィーナが良かった。2023/12/11
rosetta
41
★★★★✮これもまた読み終わるのが勿体ない本だった。勿体なさすぎて途中で中休みを入れたほどだった。『熱源』の感動を何度も思い出した。決して物足りない訳では無いがどうしても短編集なので「え、ここで終わり?川越さん殺生でっせ!」と言う感想は避けられなかった。時代や大きな支配者に戦いを挑む人達の物語。特にモンゴルやインドのの独立に関わる二篇には大長編を読んだような満足感があった。これで図書館で予約待ちなしで借りられるなんて、世間の人は賞とかテレビで紹介された本にしか興味は無いのだろうか?2024/01/23
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