内容説明
指揮者が語る音楽史の裏側
20世紀後半に作曲されたクラシック音楽の作品で、その後世界中のオーケストラや歌劇場のレパートリーに加わった作品はごく少ない。そして、現代の音楽であるはずの「現代音楽」は、一部の愛好家を除けば人気があるとは言いがたい。この状況を著者は、「現代のクラシック音楽というものが狭い範囲に限定されたからこそ、他のジャンルの音楽が大いに栄えているのに、オーケストラやオペラハウスがいわゆる『危機的状況』にある」と見る。現在もレパートリーの中心をなしているかつての大作曲家の系譜はどこへ行ってしまったのか？
映画『風と共に去りぬ』の作曲者でウィーン楽友協会音楽院に学んだマックス・スタイナーは、かつて「仮にワーグナーが今世紀に生きていたら、映画音楽でナンバーワンの作曲家になっていたでしょう」と語った。本書は20世紀クラシック音楽の歴史を、この問題に大きな影響を与えた第一次・第二次世界大戦、冷戦とのかかわりから見ていくものである。「現代音楽」たる前衛音楽、政治的な事情で埋もれてしまった作曲家に、クラシック音楽家の系譜につらなる映画音楽やミュージカルの作曲家まで含めて語る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kazutox
5
2022年の本で、2023年の訳。クラシック音楽にはいろいろ謎がありますが、「新作がレパートリーに入らない」ことがその一つ。現代音楽（調性のない音楽）はクラシックの後継ということになっているのに、作品が繰り返し演奏されることがない。また、本書で新しく知った謎は「コルンゴルトやシェーンベルクなど大戦前にドイツからアメリカに移住した作曲家のアメリカ時代の作品が完全に無視されている」というもの。本書はそこに戦争と政治の巨大な影響を見ます。「クラシック音楽とは一体何なのか」という疑問に答えるとても刺激的な本。2024/03/30
