創元推理文庫<br> 古書の来歴

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創元推理文庫
古書の来歴

  • ISBN:9784488216078

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内容説明

伝説の古書『サラエボ・ハガダー』が発見された――深夜のその電話が、数世紀を遡る謎解きの始まりだった。容赦ない焚書と戦火の時代にありながら、この本は誰に読まれ、守られ、現代まで生き延びてきたのか? 調査を依頼された古書鑑定家のハンナは、ページに挟まった蝶の羽や、羊皮紙に染み込んだワインの一滴を手がかりとして、美しい古書の歩んできた歴史をひも解いてゆく。その旅路には、激動の世を懸命に生きる人々の姿があった――科学調査に基づく謎解きの妙と、哀惜に満ちた人間ドラマが絡み合う、第2回翻訳ミステリー大賞受賞作!/解説=千街晶之

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

たま

62
読書会のために再読。初読は2010年、その後版元のランダムハウスジャパンから版権が移ったようで、昨年創元推理文庫から文庫本が出た。サラエボ・ハガダーと呼ばれる実在のユダヤ教祈祷書を題材に古書修復専門家のハンナが祈祷書の来歴を探る。ハンナが調査で世界を飛び回る時間軸に沿ったパートと、古書の来歴が時間を遡って語られるパートから成る複雑な構成。近年のサラエボ攻囲と第2次大戦中のサラエボで危険を冒してハガダーを守ったのはイスラム教徒の学芸員たちである。オスマン帝国の懐の深さとその伝統を思う。→ 2024/02/24

geshi

22
ハガタ―から得られた手掛かりを元に古書の来歴を紐解いていく知的好奇心を期待していたが、それは話のブリッジで、古書に関わった人々のドラマが連作短編式に語られる。それぞれの時代で人々が受ける苦難の歴史は痛々しく刺さり、書を焼くことは人を焼くことに繋がるという言葉を改めて認識させられる。そんな差別や苦境の中でも守ろうとしたものの尊さが重く、ハガタ―が現代まで残っている意義を読者が自分のものとして実感できる。しかし1998年のハンナが合わず、最後の展開も強引な付け足しに見えてしまった。2024/02/04

みやび

15
古書についた蝶の翅やワインのシミと思われるものなどから物語を展開させて、時代を遡っていく構成にはうっとりするものがありました。現代に発見されたユダヤ人の祈祷書。500年ものあいだに関わっていった人々の苦難、特に女性が描かれています。最初は嫌いだったけど、調査する古書鑑定家ハンナもまたその一人だったんだなと、ラストしみじみ思いました。2024/03/24

Urmnaf

9
サラエボで再発見されたハガダー。偶像崇拝が禁止されているユダヤ教の書でありながら、優れた細密画で彩られており、なぜこのようなものがあるのか謎に包まれていた。その鑑定修復を依頼されたハンナは、調査の過程で様々なものを見出す。蝶の羽やワインの中の血、猫の毛など。その一つ一つから、その本の来し方を思う。ただし、ミステリチックに過去を再構成するわけではなく、挿話として(ある種唐突に)過去の物語が語られる。ドラマとしては面白いが、謎解き要素はない。ハンナ自身の物語もまたそう。欧米物にありがちな今風のミステリー。2024/01/07

Sydney2020

8
タイトル通り古書の来歴を辿る話。古書鑑定家ハンナが古いユダヤ教の祈祷書から採取した昆虫の翅、ワインのシミ、塩の結晶、獣毛などを科学分析し本の来歴を推測する。翅は高地に生息する蝶のもの、ワインには人間の血が混入、塩は海由来、毛は絵筆に使われた猫のもの… ただハンナが知ることができるのはそこまで。分析結果が出る度、話はその時代に飛び、詳細な経緯が読者にのみ明かされる。辛いのはどの時代のどの話も民俗(宗教)紛争や戦争による悲劇の物語であること。最後の最後、絵の作者がムーア人女性だとハンナに分かるところが救い。2024/02/25

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