岩波新書<br> 文学は地球を想像する - エコクリティシズムの挑戦

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岩波新書
文学は地球を想像する - エコクリティシズムの挑戦

  • 著者名:結城正美
  • 価格 ¥1,056(本体¥960)
  • 岩波書店(2023/10発売)
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  • ISBN:9784004319887

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内容説明

環境問題を考える手がかりは文学にある.ソロー,石牟礼道子,梨木香歩,アレクシエーヴィチ,カズオ・イシグロらの作品に,環境をめぐる文学研究=エコクリティシズムの手法で分け入ろう.人間に宿る野性,都市と絡みあう自然,惑星を隅々まで学習するAI──地球と向き合う想像力を掘り起こし,未来を切り開く実践の書.

目次

まえがき
想像力の危機は環境の危機
物語の力
本書の構成
序章 エコクリティシズムの波動
環境危機と文学研究
エコクリティシズム宣言
「環境批評」や「文学と環境」という別称
実態と言説のあいだ
1章 近代化,わきたつ野性――綴り直される感覚
1 ネイチャーライティングと散歩者の夢想――ヘンリー・D.ソロー『森の生活』
自然を知るということ
私という社会
歩くという実践哲学
野性を映す過剰の文学
野性にこそ世界は保たれる
ネイチャーライティングとは
2 山の身になって考える――アルド・レオポルド『野生のうたが聞こえる』
科学と美の融合
美が心の目をひらく
自然保護から土地倫理へ
凶暴な緑色の炎
〈生存の文化〉と〈進歩の文化〉
2章 森を出て環境を知る――〈自然らしさ〉という神話
1 自然は逃避先なのか――生の網の目,搾取の網
自然志向に関する誤謬
環境正義エコクリティシズム
ポストコロニアル的転回
アフリカの国立公園が意味するもの
アメリカの国立公園が意味するもの
2 都市のなかの自然――『 の眼』と『オレンジ回帰線』
ハエと少年
きれいは汚い,汚いはきれい
空き地と基地
北回帰線が動くとき
境界をかき回す
ホームとしてのフリーウェイ
危惧される〈経験の絶滅〉
技術圏の自然
3章 危機が叫ばれる時代に――つくられた共生,生きられた共生
1 「自然との調和」を再考する
「自然との調和 」はエコロジカルなのか
生物多様性国家戦略にみる〈共生〉のレトリック
プラスチック・ワードのなめらかさ
連なるいのち,あるいは,生きものを殺して食べる罪の自覚
2 切れないいのち――石牟礼道子『苦海浄土』
「水俣病わかめといえど春の味覚 」の過剰さ
海とともにある人
ビオスに還元されないいのち
絡まりあいの多声性
水俣という場所,マルチスピーシーズの里山・里海
3 暮らしのなかの脱成長――梨木香歩『雪と珊瑚と』
真似したくなる節度ある豊かさ
経済成長社会に幻視される別の道
「チーム .自分」の共同体
手から生まれる快楽と連帯
4章 人新世を考えるために――〈人間以上〉を描く作家たち
1 核の時代の祈り――スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチと小林エリカ
メタ言語としての科学技術
放射能発見からたかだか一二〇年
廃棄と封じ込めの思考
誰にとっても未知の場所
見えない光への感応
官能の境界侵犯性
2 人工親友がいる日常――カズオ・イシグロ『クララとお日さま』
画面の向こうには何があるのか
AIの記憶にみる他=多のふるまい
機械から仲間へ
技術圏のトリックスター
ロボットに人間らしさが感じられるとき
3 惑星規模の思考へ――多和田葉子とリチャード・パワーズ
人間による,人知を超えた,ありふれた危機
地球に同調する子どもたち
まるい地球の曲線に沿って考える
いつまでも地球のお客さん気分でいちゃいけない
活動的な静寂,あるいは人間の擬樹化
技術圏で森の身になって考える
終章
想像力の再調整
危機とともに生きるために
あとがき
引用参照文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ネムル

13
はいはいソローでしょ?くらいのつもりで読んだら叱られた気分。テクストと事象の両輪をもって知覚への変革を促すこと、空間/歴史的な視座をもつポストコロニアリズムとの相互補完など、すごく勉強になった。まずは『苦海浄土』の再読から始めたいが。2023/11/25

ラウリスタ~

12
最近よく耳にするエコクリティシズムだが、アメリカで流行っているとか、素朴な自然礼賛に近いの?(ソローがいつも参照されるし)、とかそんな印象しか持っていなかったので入門書を読んでみる。19世紀アメリカに生まれたネイチャーライティングは、21世紀には理論派エコクリにより、都市vs自然の二項対立が問題視され批判される。ところが本書(第二章冒頭)では、ネイチャーライティングがロマン主義的な(ルソー的)自然を志向しているという決めつけがさらに批判。どちらがその二項対立に囚われているのか。自然礼賛から環境問題へ移行。2023/11/25

やす

4
文学から環境問題、社会問題を考えるというエコクリティシズムについて知ることができた。初めて聞く考えだったから新鮮で面白かった。 本の中で言及されている書籍を読んでみたい。2024/01/11

akiko aikawa

3
耳慣れない分野エコクリティシズム、面白いかもしれない。 「想像力の危機は環境の危機」、「物語によって感覚が呼び覚まされ腑に落ちるとき、実感をもって問題と向き合いはじめる」「社会の〈ふつう〉は〈つくられたもの〉だ」など、そこここでなるほどと思った。池澤夏樹、星野道夫、梨木香歩、千早茜もかな、『ザリガニの…』『沈黙の春』を読んで感じるのは、人間以上の世界に触れる驚きというか、やはりこれは思考の再調整でしょうか。2024/03/07

nnnともろー

3
エコクリティシズムという概念についてよく分かる。文学の果たす役割の大きさを再確認。未読の作品を読んでみたい。2023/12/10

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