岩波新書<br> トルコ 建国一〇〇年の自画像

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岩波新書
トルコ 建国一〇〇年の自画像

  • 著者名:内藤正典
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  • 岩波書店(2023/09発売)
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  • ISBN:9784004319863

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内容説明

オスマン帝国崩壊と過酷な独立戦争を経て,世俗主義の国家原則をイスラム信仰と整合させる困難な道を歩み,共和国建国一〇〇年を迎えたトルコ.度重なる軍事クーデタ,議会政治の混乱,膠着するEU加盟問題,未解決のクルド問題など様々な課題に直面しつつ,新たな自画像を模索した波乱の過程をトルコ研究の第一人者が繙く

目次

はじめに──トルコの「表の顔」
第1章 トルコの地域的多様性──沿岸と内陸
沿岸部――国土を囲む三つの海
内陸部――広大なアナトリア高原を点描する
【コラム】トルコ憲法にみる国のかたち
第2章 一九九〇年代──不安の時代
混迷する社会,イスラム主義政党の台頭
最後の「クーデタ」に至る道
第3章 エルドアン政権への道──障壁と功績
「反動主義」と民意
政治家エルドアン――スター誕生
一九九九年という困難な年
イスラム主義政党から生まれた「新進組」
エルドアン政権の誕生
第4章 EU加盟交渉の困難な道のり
ヨーロッパ共同体への「長く細い道」
エルドアンと公正・発展党政権が進めたEU加盟交渉
トルコ国民の思い
第5章 世俗主義をめぐる闘い──軍部と司法の最後の抵抗
二〇〇七年四月二七日,大統領選挙
公正・発展党閉鎖裁判
ヒジャーブ問題の帰結
第6章 エルドアン政権,権力機構の確立──権力の集中はなぜ起きたか
大統領の直接選挙制から大統領制へ
大統領への権力集中をもたらした「クーデタ未遂」事件
第7章 揺らぎなき「不可分の一体性」と民族問題──クルド問題の原点と和解プロセスの破綻
民族問題の構造
オスマン帝国の崩壊と民族問題の源流
トルコの独立戦争とローザンヌ条約
クルド問題に対する政策の変遷
クルドをめぐる政治と軍事衝突
クルド政党――政治プロセスへの参入と司法による拒絶
政権とPKKとの「解決プロセス」とその破綻
第8章 直面する課題──いかにして難題を乗り切るか
課題1=欧米諸国からのイスラム嫌悪
課題2=激しいインフレと市民の防衛策
課題3=ウクライナ戦争とトルコの役割
終章 建国一〇〇年の大統領
二〇二三年大統領選挙・大国民議会議員選挙
二〇二三年大統領選挙の意味
あとがき
関連年表

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

trazom

109
内藤先生の本を読むと、いつも、エルドアン大統領に甘いなあという感想を覚えてしまうが、こうしてトルコの現代史を詳細に辿ると、むしろ、欧米及び日本のメディアの報道が、いかに偏った印象操作であるかを実感する。欧米とロシア、ヨーロッパとアジア、キリスト教とイスラム…多くの価値観の結節点の中で、「国家・国土・国民の不可分の一体性」と「世俗国家」という確乎たる理念に沿って国家運営をするこの国の強かさが見えてくる。そういう理解の上で、イスラム主義やクルド人問題(本質はPKK問題だと思う)をウォッチしてゆきたいと思う。2023/12/20

skunk_c

64
トルコ研究の第一人者と言っていい著者が、建国100年の節目に表した概説書。地理学者らしい地域の説明から入るが、本題はやはりエルドアン政権について。特にウクライナの戦乱に対するトルコの対応をNATO諸国が批判し、日本でもほぼその孫請けのような評価があふれる中、トルコ視点から問題を考える本書のような立場は貴重だ。エルドアンがアタチュルク以来の世俗主義からイスラーム寄りへ舵を切ったのは確かだが、それを支えるトルコ民衆がヨーロッパへ熱い視線を送っているというのはある種の驚き。キプロス問題の評価も適切と思った。2023/10/11

原玉幸子

22
ムスリムの国々はイスラム教の教えを国家運営に反映させると思い込んでいましたが、トルコでは、仏の影響を受けた「世俗主義」を国家の一つの理念として思想・文化が醸成されていて、驚きました。全てを憲法化/法制化する文化というのもどうか(お上からの通達より生活実感から形成される精神性の方が尊い)と思いますし、又そもそも、政治的側面から国家を読み解くのは余り好きではないのですが、NATO(加盟済)やEU(未だ加盟認められておらず)との駆引き、逡巡、葛藤には、ストーリー性を感じます。実に面白い。(◎2023年・冬)2023/11/03

紙狸

19
2023年8月刊行。著者の内藤正典氏は、トルコ、イスラム・ヨーロッパ関係の専門家として知られる。この本はエルドアン政権のトルコに重点を置いた。PKKとの和解の試みの失敗に関連したこう書く。「強すぎるナショナリズムをイスラムのロジックで緩和し、民族間の融和を図るというイスラム主義の実験」は成功しなかった。しかし、西欧近代国家をかたちづくるナショナリズムや世俗主義に挑戦したことによって、トルコは「新たな経験値」を得た・・・。EU加盟交渉が開始早々挫折したのは、キプロスの扱いを巡るEU側の失敗が大きい。2023/11/06

崩紫サロメ

16
エルドアン政権の20年についての振り返りを中心とするもの。著者はこのところ、SNSでエルドアンのスポークスマンのような言説を繰り返しているが、それをややマイルドにまとめた内容で、ギュレン教団やPKKに対する姿勢は政権の公式見解と一致する。利下げについて「エルドアン政権は、その常識よりも、イスラム的論理の弱者救済の方をとった。かれは、中央銀行の独立という大義名分よりも、貧困層の破産を防ぐ方に重きを置いたにすぎない」とあるが、岩波新書でここまで現政権を擁護しているものは珍しい。 2023/09/11

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