内容説明
オスマン帝国崩壊と過酷な独立戦争を経て,世俗主義の国家原則をイスラム信仰と整合させる困難な道を歩み,共和国建国一〇〇年を迎えたトルコ.度重なる軍事クーデタ,議会政治の混乱,膠着するEU加盟問題,未解決のクルド問題など様々な課題に直面しつつ,新たな自画像を模索した波乱の過程をトルコ研究の第一人者が繙く
目次
はじめに──トルコの「表の顔」
第1章 トルコの地域的多様性──沿岸と内陸
沿岸部――国土を囲む三つの海
内陸部――広大なアナトリア高原を点描する
【コラム】トルコ憲法にみる国のかたち
第2章 一九九〇年代──不安の時代
混迷する社会,イスラム主義政党の台頭
最後の「クーデタ」に至る道
第3章 エルドアン政権への道──障壁と功績
「反動主義」と民意
政治家エルドアン――スター誕生
一九九九年という困難な年
イスラム主義政党から生まれた「新進組」
エルドアン政権の誕生
第4章 EU加盟交渉の困難な道のり
ヨーロッパ共同体への「長く細い道」
エルドアンと公正・発展党政権が進めたEU加盟交渉
トルコ国民の思い
第5章 世俗主義をめぐる闘い──軍部と司法の最後の抵抗
二〇〇七年四月二七日,大統領選挙
公正・発展党閉鎖裁判
ヒジャーブ問題の帰結
第6章 エルドアン政権,権力機構の確立──権力の集中はなぜ起きたか
大統領の直接選挙制から大統領制へ
大統領への権力集中をもたらした「クーデタ未遂」事件
第7章 揺らぎなき「不可分の一体性」と民族問題──クルド問題の原点と和解プロセスの破綻
民族問題の構造
オスマン帝国の崩壊と民族問題の源流
トルコの独立戦争とローザンヌ条約
クルド問題に対する政策の変遷
クルドをめぐる政治と軍事衝突
クルド政党――政治プロセスへの参入と司法による拒絶
政権とPKKとの「解決プロセス」とその破綻
第8章 直面する課題──いかにして難題を乗り切るか
課題1=欧米諸国からのイスラム嫌悪
課題2=激しいインフレと市民の防衛策
課題3=ウクライナ戦争とトルコの役割
終章 建国一〇〇年の大統領
二〇二三年大統領選挙・大国民議会議員選挙
二〇二三年大統領選挙の意味
あとがき
関連年表
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原玉幸子
紙狸
崩紫サロメ