内容説明
インサイダーだけが知る、袋小路に陥ったアルツハイマー病研究の実情。この病の科学的理解の根本を見直す、良心的科学者による告発。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kitten
11
図書館本。この秋は認知症や介護の本をたくさん読んできたが、この本が一番強烈。今まで主流で研究されていたアミロイドβやタウだけでアルツハイマーがわかる訳はない、とのこと。今までの研究がすべて無駄という訳ではないが、原点に戻ってやり直せ、と。うーん。学術的なところはかなり難解で、私にはどこまで正しいのかわからないところもあるが、アミロイドカスケードの理論から作られた薬がのきなみ失敗しているのは事実だし、今年承認された新薬も、決して夢の新薬ではない。果たして、研究者はこの大きな失敗を認めて方針転換できるのか?2023/10/31
人生ゴルディアス
8
別の本でもアミロイドカスケード仮説について批判されていて、本書が新刊に並んでいて手に取ってみたが、認知症患者の脳を調べたらプラークだらけ⇒プラークのたんぱく質をコードする遺伝子がダウン症の原因遺伝子と共通⇒マウスにプラークを増殖させたら認知機能が低下⇒アミロイドワクチンによってプラークを除去したら認知機能改善⇒パーティー! という一連の研究の成功が出そろう頃には、権威や産業構造が固まってしまっていて、誤ったKPIをもう誰も変えられなくなっていた、みたいな感じか。前世代が死に絶えるのを待つしかなさそう。2024/01/18
belier
5
アミロイドプラークをアルツハイマー病の主な原因とするのは誤りかもしれないという本は以前も読んだことがあるが、著者は具体的にそれを論証している。この仮説に拘り続ける研究機関、製薬業等への痛烈批判の書でもある。素人にも著者の主張は説得力があった。だが正しいかどうか判定できるわけでなく、もしかすると医学界の異端児のひがみかもしれないと思いもした。で、認証された抗アミロイドβ抗体新薬の最新記事を調べると、多くの人の治療が期待できる薬ではないと。よってこの本は信用してよさそう。でも医学への信頼はやや薄れてしまった。2023/11/05
一憲大塚
3
製薬業界にいるとアミロイドカスケード仮説に疑問が投げかけられているというのは昔から聞く話であるが、この本はその話を上手くまとめてくれている。アミロイドカスケード仮説以外の仮説に対しては、例え共存が可能であったとしても叩き潰されるというのが、この本の一番の美味しいところかもしれない。資本主義の下、金銭による支援体制が出来てしまったら容易に裏切る事は出来ないと言う事か。また、最近海外著書を読む機会があるが、今のところ全ての著者が製薬産業は患者利益より金銭を重視しているとネガティブな印象を持っている。2023/12/12
げんさん
2
市民の姿勢を変化させるには、マーケティングをどうするかにとどまらず、この研究分野が自らをどう見るかも大事になってくる。根拠のない説や通年や、「よく知られている」物事は、21世紀のデータに合うよう修正しなくてはいけない。それができてようやく、この人間の疾患を適切に研究できる準備が本当の意味で整う2024/01/24