内容説明
「習氏は様々な場でこう訴えてきた。『100年に1度の変革の時が来ている。世界、時代、歴史の変化がかつてない形で展開する』。その言葉からは、世界がもはやかつて来た道へと帰ることのない『ポイント・オブ・ノーリターン』に立つ覚悟が滲む」(本書おわりに「『中国式鎖国』と世界が迎える『ポイント・オブ・ノーリターン』」から)
3期目がスタートした中国の習近平政権。米中の対立が深まる中、その毛沢東、韓非子流の統治スタイルはどこに向かうのかーー。習氏の幼少期から文革期の下放時代、福建省、浙江省、上海市などでの地方幹部時代を丹念に追い、習氏のプロファイリングから導き出されるものから、今後を占う。
目次
はじめに
習近平氏は2期10年で何を成し遂げたのか
――習氏のプロファイリングからわかること
■第一章 習氏の権力掌握への道――ビジュアルデータ篇
■第二章 習氏の権力掌握術――その緻密な組織・人事戦略
■第三章 政治家「習近平」はどうつくられたかーー思想と政策の源流を探る
■第四章 習近平氏を待つ課題――100年目標の行方
おわりに
「中国式鎖国」と世界が迎える「ポイント・オブ・ノーリターン」
付録
第20期中国共産党中央政治局員ら主要人物26人の全データ
習氏の軌跡と中華人民共和国の歩み
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kawa
35
従来にない重厚な中国分析、中国の圧倒的指導者として君臨する習近平(「氏」を付けることに何故か躊躇)の軌跡が刺激的。温厚で可も不可もなしの無難な評価でリーダー・デビュー。しかし、彼の頭の中には毛沢東思想がお手本の周到な統治構想が存在した。人民解放軍改革。小組治国、中央政治局員(業務)報告制度、2021年歴史決議による党と政府の掌握。警察司法権力把握のための「整風運動」等。着々の鮮やかな押さえで2022年、全権を掌握し名実とも習一強体制を構築するに至った経緯を詳述。2023/11/07
くものすけ
6
習近平とはどんな人物なのか、また、現在の中国習近平政権の成立経緯、構想なども非常に分かり易くまとめられており読み易き、すんなりと理解出来ました。日本経済新聞の記者として中国に駐在、ここまで詳細な情報を入手し、その裏を摂る事はかなり至難の技ではないかと思いました。鄧小平以降の江沢民、胡錦濤政権を”否定”し、権力を習近平一人に集中したことに成功しているが、独りで14億人もの人民の統治が可能なのか如何かはもう暫く見守らないと成否は判断できないと思います。周囲を同郷の旧友、嘗ての部下、YESマンらで固めている…2024/07/27
Ryoichi Ito
5
中国人民解放軍は物量では台湾を圧倒し,米軍と匹敵する実力を持っており,短期間で台湾を制圧する力がすでにある。しかし,中国共産党の使命は,台湾を焦土にすることではない。「台湾が独立を強行する」,「習政権が崩壊寸前に追い込まれる」など特殊な状態にならない限り,台湾侵攻が早期に起こる蓋然性は極めて低いと言えるだろう。この見解が正しいことを祈るのみ。 2024/02/27
kanaoka 57
4
人類の歴史上、これほど多くの人間を支配した人物はいない。習近平は毛沢東を超える独裁を完成させ、次に向かうのはどこか?中国は、そして世界はどこに導かれていくのだろうか?習近平が作り上げた権力構造、彼の思想背景、中国の抱える問題等々、今後を読み解くうえで大変参考になりました。2023/08/20
tenorsox
2
習近平が強固な権力基盤を作り上げてきた過程、その背景にある信条や家庭環境等について。 最近の強権化はマインドが変わった訳ではなく就任時から着実に手を打ってきた成果であること、従来から経済よりも統制(というか経済発展に合わせて統制強化)という思想の持ち主であること、近隣諸国含めた中華圏には強く拘るものの世界の覇権までは欲していないこと等、色々興味深く読んだ。ともあれ自身一人に権力を集め過ぎてしまった状態で国内外の難題に対処していくのはムリゲーに近く、早期の失脚と(周辺国にとっての)状況改善を期待しつつ読了。2023/12/13