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内容説明
面白すぎる戦国武将と天下統一の舞台裏。
NHK大河ドラマ『どうする家康』で脚光を浴びる戦国時代。織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の三英傑が取り組んだ天下統一事業の舞台裏に照射。戦国史屈指の研究者・藤田達生教授(三重大)が全国各地を実際に取材行脚した成果をまとめた痛快戦国伝。「織田信長の四国政策転換」が本能寺の変の動機であるとする鋭い論考、徳川家康の伊賀越えの舞台裏など、スリリングな原稿に加えて、
「伊達政宗と家康六男忠輝との関係」「スペイン・ポルトガルの日本植民地計画を未然に防いだ秀吉の功績」「天下統一最終段階で行なわれた奥州なで斬り」「津軽に逃れて弘前藩の家老になった石田三成遺児」「尼子一族と鉄」「島原の乱とキリシタン」など読み応え抜群の原稿を多数収録。さらに、瀬戸内の村上海賊、志摩半島の九鬼水軍、房総の里見水軍、北東北の安東水軍など列島各地の「水軍大名」が江戸時代には内陸に領地を与えられ水軍力を封じられた事実に見る家康の深謀遠慮など、戦国がさらに面白くなる一冊。
(底本 2023年8月発売作品)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
115
桶狭間の戦いは知多半島支配権を巡る織田と今川の戦いと評し、家康の伊賀越えは実質的には甲賀越えであったと見る。また本能寺の変は足利幕府復権を図った光秀と義昭の通謀の結果であり、戦国期でも足利の権威は依然として大きかったことは同時代を考える上で重要なカギとなる。また越前や若狭を京都の外港と位置付けた信長の視点や、環日本海流通圏の発展や仙台藩の海防システム構築など知られざる事実をも取り上げるのは新しい補助線だ。歴史とは権力者だけでなく、多くの人間の思惑が絡み合って形成されていくものとする著者の歴史観には頷ける。2023/12/23
skunk_c
63
全般を通じ海域を意識した戦国史となっている。桶狭間の戦いについては最近の正面攻撃説をとっていつつ、知多半島の付け根から伊勢湾を望む海域を意識する。本能寺の変については石谷文書を解読しつつ将軍義昭を立て長宗我部を救済するねらいとするが、この辺は諸説あるのできちんと読み比べたい。残りの部分は著者が取材で訪れた地域(写真もかなりある)の現在と歴史をさらっと紹介するが、旅心をくすぐる。近くを通った場所で見逃していたり、自分も行ったがこういう見方もできるのか(島原の原城など)と、コラムも含め楽しく読むことができた。2023/10/14
軍縮地球市民shinshin
18
戦国史研究をリードする著者の紀行文集。正式の論文ではないので、いろいろ書いているが史料的根拠はそれほど厳密に挙げられていない。ただ本書の主眼は、新発見の石谷家文書の話だろう。明智光秀はかねてから将軍足利義昭と通じており、義昭復権を目指して本能寺の変を起こしたというもの。義昭は信長によって京都から追放され毛利輝元の庇護の下、備後鞆の浦に居たが、相変わらず征夷大将軍であることに変わりはなかった。歴代足利将軍をみても、京都から逃れた将軍は何人も居り、義昭としては当然復権できると思っていたのだろう。ただ本書では2023/12/06
roatsu
15
前近代の移動や交易圏形成には陸路の街道だけでなく、河川湖沼や海の舟運も大きなシェアを占めた事実からそうした役割を担う民が生活基盤を置き、これを支配・利用する勢力が交錯した各地半島の同時代史を訪問記を交えて眺める紀行文。とはいえ、著者が半島をゆく、と称するほどの内容ではなく文字通り秘史(?)として戦国時代の画期となった桶狭間、本能寺、伊賀越えなど有名事件を中心に通説と異なる検証を披露する内容にとどまる様な。個人的には豊臣・徳川の二大権力の間をうまく遊泳した津軽氏の話や、伊賀・甲賀に見る足軽働きをするため国外2023/08/31
Yoshihiro Yamamoto
3
A+ 「桶狭間の戦い」を伊勢湾の制海権を巡る争いと捉え、朝倉・浅井攻めは環日本海の制海権確保のためとした点や海賊のいる瀬戸内海よりも、日本海をダイレクトに朝鮮半島へ行った方が良いという指摘。面白い。柴田勝家が北ノ庄を任されたのは、ある意味左遷的に思っていたが、「大陸→朝鮮半島→敦賀→琵琶湖→都」という信長の目指す明への大流通路の要をナンバーツーに抑えさせたと考えると、歴史の別の側面が見えてくる。里見氏や津軽北畠氏・安東氏などへの興味を掻き立たせてくれたのもこの本のお陰。新しい知見やアイディアに富む良書。2023/10/02