ちくま学芸文庫<br> 資本主義から市民主義へ

個数:1
紙書籍版価格
¥1,210
  • 電子書籍
  • Reader
  • ポイントキャンペーン

ちくま学芸文庫
資本主義から市民主義へ

  • 著者名:岩井克人【著者】/三浦雅士【著者】
  • 価格 ¥1,100(本体¥1,000)
  • 筑摩書房(2023/08発売)
  • GW前半スタート!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~4/29)
  • ポイント 300pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480096197

ファイル: /

内容説明

貨幣は貨幣だから貨幣なのだ。貨幣を根拠づけるものはただ貨幣だけ。言語・法・貨幣の、社会と人間を貫く自己循環論法こそが、恐慌も生めば、自由をももたらす。それを踏まえて、われわれはどのような市民社会を構想すべきか。資本主義を超えて、来たるべき市民主義とはいかなるものか。貨幣論に始まり、資本主義論、法人論、信任論、市民社会論、人間論、そして倫理論まで、経済学や社会哲学を縦横に論じつつわかりやすく解説。次代の社会像を示す!

目次

第1章 貨幣論/はじめに/金融とは何か/「派生物=貨幣」に支えられる「実体=経済」/『ファウスト』も労働価値説だった/錬金術こそ貨幣の謎を模倣した/労働価値説という虚構がなぜ生まれたか/都市と農村の二重構造が国民国家をつくった/資本主義が高度情報化もグローバル化も作り出した/賭け──差異性をめぐるもっとも退廃した形態/貨幣──いますぐ使わなくてもよいという自由/貨幣は投機の別名、資本主義の本質、すなわち自由/通貨危機の背後にあるもの/基軸通貨ドルも自己循環論法で成立している/シニョレッジをもった国、アメリカ/世界中央銀行は可能か/基軸通貨の安定は労働者を移動させる/「言語・法・貨幣」が人間をつくった/資本主義と無限の観念/第2章 資本主義論/貨幣論から法人論へ/会社はモノであって同時にヒトである/モノでありヒトであることの謎/法人名目説と法人実在説の戦い/組織特殊的な人的資産──日本の伝統/デ・ファクト・スタンダード(事実上の標準)/『会社の二つの身体』/産業資本主義の時代/ポスト産業資本主義の時代/産業資本主義のイデオロギーとしての社会主義/マルクスをマルクスによって批判する/「近代世界システム論」批判/ドル中心主義とアメリカ中心主義は違う/労働価値説によって支配された二百年/第3章 法人論/始原としてのポストモダン/ケインズの美人投票論/デ・ファクト・スタンダードとしての美/奴隷になってはじめて主体になる/国家もまたヒトであると同時にモノである/国家的会社から会社的国家へ/社会的実在としての言語・法・貨幣/貨幣商品説と貨幣法制説の対立は諸学を貫く/言語・法・貨幣と宗教/法人は社会的承認を必要とする/資本主義社会は倫理性を絶対に必要とする/契約関係は信任関係から派生したと考える/ポストモダンに倫理は可能か/言語という外部/倫理の基軸としてのカントの定言命題/文学という最後の鍵/第4章 信任論/現実が理論を模倣する/会社という法人は二階建てになっている/会社の社会的責任とはどういうものか/貨幣論においても法人論においても私有財産制は大前提である/私有財産制とは何か/自己利益追求で成立しているシステムは必然的に倫理性を必要とする/信任関係の起源/信託関係では所有権が二重になる/財産をもってはいけない人に財産を寄進するにはどうするか/ヒトとモノ、否定と抑圧/自己循環論法──実体のないものが力をもつということ/フロイト、ラカン、ケインズ/モノへの欲望の否定としての貨幣が、欲望の対象になる/社会があるから人間があり、人間があるから社会があるという循環論/法人は社会的承認を必要とすることの意味/近代は、ヒトがモノでもあることを抑圧したことによって成立した/言語・法・貨幣は遺伝子ではない/自己循環という起源/第5章 市民社会論/貨幣論、法人論から、市民社会論へ/仮言命題は社会主義的で、定言命題は反社会主義的である/人間社会には、物理的な実体とは違う社会的な実体がある/存在の忘却と貨幣の忘却──ハイデガーとケインズ/形式的な論理(資本主義)に対する形式的な倫理(カント)/不完全性定理は真理の新たなあり方を示す/社会的な実体としての言語・法・貨幣は進化する/カントの倫理がたんなる思想ではなく、真理となった社会が市民社会である/「国家および資本主義を超える何か」としての市民社会/建設的な虚構が要請されつづける市民社会/第6章 人間論/社会的実体というものが存在する/規範意識は遺伝するが、私有財産制はじつは遺伝に反する/遺伝決定論優勢は動かない、しかし社会的実体は遺伝しない/言語・法・貨幣は、共同幻想ではなく社会的実体と見なしたほうがいい/死ぬことによって「法」と化したロミオとジュリエット/言語・法・貨幣を成立させるものとしての「書き言葉」/命名されたときに人はすでに法人になっている/最終的には、数学も文学に含まれ、経済学も文学に含まれる/欲望の他者性は、他者の欲望と決定的に違う/自己循環論法によって成立するものは、つねにパニックの危機を孕む/法は国家に、貨幣は資本主義に、言語は市民社会に対応する/社交する人間たちのための市民主義/集団ヒステリーとしての国民投票/市民社会の理想が国家と資本主義を支える/補章 倫理論/コミュニタリアニズムをどうとらえるか/いまなぜ正義論なのか/カントは資本主義を否定しない/社会的現実と言語・法・貨幣/リバタリアンだとしたら……/「信任」という問題/個人とコミュニティ志向/単身急増社会にはプラクティカルな対応を/人間と言語の構造/日本社会と母系制/岩井克人著作一覧/初出一覧

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

壱萬弐仟縁

22
2006年初出。1999年のものから収録。インタビュー形式。人間は投機するサル(019頁)。貨幣は貨幣として使われるという自己循環論法によって価値が支えられている(024頁)。中心と周縁のあいだの価値体系 の差異性こそ、産業資本主義的な利潤の源泉(032頁)。貨幣をもつことは、未来に向けた投機にほかならない(038頁)。資本主義経済は不安定システムで、安定性を保つには制度や機関があるため(049頁)。市場だけではない。この視点は重要で、レギュラシオン理論にも連なるであろう。  2014/11/01

中年サラリーマン

17
じゃあ、どーすんの?っていうところに多少の不満は残るにせよ、途中マルクス主義とかいろいろな道をとおってきたけど結局資本主義ってのは価値観の差異をを利用していく運用でありそのためには形式的でなければならない。資本主義を動かしているキーワードとしては言語、法、貨幣の3つであるということは理解した。自己循環論法の切り口は素晴らしい。ただ、未来に希望がもてなくなるけど・・・2014/05/11

浅香山三郎

13
これまでの岩井さんの研究を三浦さんとのやり取りで位置付け直す。岩井さんの少なくとも、ちくま学芸文庫になつてるものは、読んだ筈なのだが、かなり忘れてゐた。「貨幣は貨幣だから貨幣である」といふ自己循環論法については、岩井さんの代表的な主張だが、言語や法もさういふものだといふ議論。或いは、法人や信任といふ仕組みの中の倫理の存在、国家と資本主義の原理とは別に働く市民社会の役割など、これまでの岩井さんの研究を拡張して、話が多岐に及ぶ。その後現在のトランプ大統領当選に至る現象をいまだう読み解くか聞いてみたい。2017/01/21

ネコ虎

12
信任論へ至る思考のプロセスがやや理解できたが、全体として難しい。信任論それ自体についての説明が何度も同じ言い回しが出てくるだけでそれ以降へ深まっていかないのは残念。それにしても対談者の三浦雅士氏が岩井克人氏の解説の邪魔ばかりしている。折角具体的に説明しようとしているのに、混ぜっ返すし、カントだなんだと訳の分からない方へ誘導する。もう少し控えて欲しかった。 信任論とは何かの解説です。 「伝統的な経済学は、この社会の人間関係をすべて契約関係として理解しようとしている。民法の基本原則に「契約自由の原則」がある。2017/05/20

カイロス時間

9
貨幣を一つのきっかけとして、資本主義について考えていく対談。貨幣の存在を支えているのは、人がそれを貨幣とみなすからという理由だけであり、その存在は無根拠であるというのが岩井理論の枢要。同じ無根拠性を法と言語にも見出し、それが人間の根源であるとまで論を広げていく。また、人は無根拠に耐えられず理論を作るが、無根拠であることは覆せない。だからそこに文学が来る、とも。その当否の判断は学者達に任せるとして、自分はこの説明をどう自分の思考に反映させるかを考えていきたい。特に理論の代わりに来るという文学の存在について。2021/10/14

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/8016705
  • ご注意事項