性食考

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性食考

  • 著者名:赤坂憲雄
  • 価格 ¥2,970(本体¥2,700)
  • 岩波書店(2023/08発売)
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  • ISBN:9784000612074

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内容説明

「食べちゃいたいほど,可愛い.」このあられもない愛の言葉は,〈内なる野生〉の呼び声なのか.食べる/交わる/殺すことに埋もれた不可思議な繋がりとは何なのか.近代を超え,いのちの根源との遭遇をめざす,しなやかにして大胆な知の試み.神話や物語,祭りや儀礼等を読み解き,学問分野を越境してめぐる,魅惑的な思索の旅.

目次

はじめに
序 章 内なる野生
野生の呼び声が聞こえる
汚れた野生の王国のかたわらで
いのちの根源は,ひとつか複数か
第二章 異類婚姻譚
縫いぐるみの神話学
異類婚姻譚の裂け目に
残酷なるもの,結婚とわかれ
ふつうの動物との結婚
生き物はみな人間に姿を変える
第三章 食と性と暴力と
肉食の終焉,そして黙示録的な未来へ
殺生と肉食をめぐる問い
子どもを食べたがる怪獣たち
グリムの森の魔女と動物たち
哄笑と残酷のゼロ地点に
子どもの本のおいしい食べ方
第四章 動物をめぐる問題系
糞と尿のあいだから生まれる
自己からの距離,分類とタブー
内なる動物性からの逃走という逆説
穴とヴァギナの精神分析
自己消費のタブーから共同の家へ
第五章 はじまりの神話
自己愛と残酷を超えるために
性のはじまり,複製から自己創出へ
神話は泥の海を欲望する
オノゴロ島にて,聖なる結婚と死
第六章 女神の死
九相図のもとでの性と死の交歓
腐敗と恐怖をめぐる形而上的な問い
オホゲツヒメの死と作物の起源
ハイヌウェレ神話の原像
女神の殺害と生殖のはじまり
神話は祭りのなかで再演される
第七章 大いなる口
ケガチの庭に饗宴が幕を開ける
戦場で語られた鳥喰い婆の昔話
大いなる口は小さな劇場である
食わず女房,または拒食の根っこに
ふたつの口が妖しい出会いを果たすとき
第八章 生け贄譚
桜の樹の下は魂鎮めの現場である
まな板と箸と庖丁,痛みの記憶とともに
贖罪の供犠と儀礼化,その終焉へ
桟敷には根源的な暴力が埋もれている
終 章 愛の倒錯
あとがき
主な参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

starbro

145
朝日新聞の書評で興味を持ち、図書館に予約して読みました。赤坂憲雄、初読です。学者らしく、古今東西の民族伝承、寓話等を通じて『性食』を真面目に考察しています。著者同様、宮沢賢治の性教育講座は受けてみたかった。「食べちゃいたいほど可愛い」娘とつきあってみたいなぁ。今回は高尚な【読メエロ部】でした。2017/12/22

キク

71
「食べちゃいたいほど、可愛い」食べることと、愛することや交わることのあいだには、不可思議な関係が埋もれている。それはひそかに、しかし、あきらかに、だれもが気づいていることではなかったか?下品になりかねない命題だが、学習院大学教授である著者は、古事記、日本書紀などの古典、折口信夫や柳田国夫の著作等から引用して民俗学的に掘り下げていく。東日本大震災の夏、三陸の魚を捌くと人の歯が出てきたという噂が流れた時、地元の漁師は「だから、食うんだろうよ」と言った。宮沢賢治を産んだ東北の地には、確かに独自な生命の思想がある2023/03/05

やいっち

70
著者は、民俗学・日本文化論の専門家で、東北文化研究センターを設立し,『東北学』を創刊された方。民俗学関連の本は少しは読んできたが著者は多分初めて。実は書店で表紙(カバー)に惹かれて手に取った。筆者は自ら絵を選んだとか。鴻池朋子氏の作品。2021/04/20

honyomuhito

44
食べること、交わること、殺すことの因果関係について民族学、日本文化論学者が数多くの文献を元に述べる。どの内容について語っても何かに障ってしまいそうなタブーの塊のような内容だ。宮沢賢治は菜食主義者で童貞で病のため兵役免除されていたため、食と性と暴力から猶予された存在として、世界の隠された現実を視る人として「注文の多い料理店」「蜘蛛となめくじと狸」「なめとこ山の熊」など数多くの作品を作れたのだという意見は興味深かった。民俗学者は妄想力が強くないと出来ないなとも思いながら読了。2018/04/29

ゆう

43
感想を文字数内におさめられる気がしない。「食べちゃいたいほど、可愛い」この表現が、世界中である程度の共感をもって受け入れられるのは何故なのか。その時、私たちは食べるという行為と、愛するという行為の間に、どのような親和性を見出しているのか。そんなシンプルな問いは、やがて人類の記憶の根源、神話や民話の世界へと読者を誘う。そしてどうやらそこには、ある種の暴力の世界があるらしい。自分の中にも存在する、人類が抱え込んだ矛盾。その深淵さを覗き見するような、スリルある論旨の展開にぞくぞくしながら読み進めた。2020/03/29

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