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内容説明
「北海道の名付け親」の生涯を描く傑作小説。
明治十六年、絵師の河鍋暁斎を訪ねた松浦武四郎は、その娘・豊の問いに応じて自らを語り始める…。
武四郎は文化十五年、伊勢国に生まれた。竹川竹齋から〈神足歩行術〉を学び、地図や道中記を見て各地を旅したいという夢を抱く。十六歳で家出して江戸に行ったことを手始めに、全国を旅するようになった。その後、蝦夷地で頻繁にロシア船が出没していることを知り、都合六回に亘る蝦夷地の探検を行った。アイヌの人々と親しく交わり、大自然に寄り添った生き方に敬意を感じていた。なかでも、ソンという子どものアイヌを可愛がり、別れた後もその消息を確かめ合うことになる。江戸に戻った武四郎は様々な記録や報告書を作成し、和人によるアイヌへの搾取の実態と救済を訴え、九千八百ものアイヌの地名を記した地図を作成した。蝦夷地通としても、吉田松陰や坂本龍馬にも助言をした。そして、北海道の名前の制定に関わる。
幼い頃から好きだった古物蒐集家としても知られるようになった。晩年には、率先してユニークな墓や棺を用意するという終活の達人でもあった。
並外れた行動力と収集癖、膨大な執筆物で多くの人を魅了した人物を描いた伝記小説。
※この作品は単行本版『がいなもん 松浦武四郎一代』として配信されていた作品の文庫本版です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KT1123
4
北海道の名付け親として知られている松浦武四郎が、絵師河鍋暁斎の娘豊に、旅に明け暮れた日々のことを語る物語。蝦夷地でのアイヌや、幕末期の有名人との交流が語られる。アイヌはだいぶ松前藩や幕府に虐げられていて、それをなんとかしようとした武四郎に恩を感じていたようだ。語り口は楽しく、暗くならないのが良かった。それにしても、ぶっ飛んだ人だったようだ。2023/12/24
花陽(かよう)読書会
1
自伝を最初に編纂したのはアメリカ人だったそうです。生まれも育ちもよい「おぼっちゃま」タイプ。北海道という地名を命名した人物です。気持ちが、とても、やさしい人という印象を受けました。「天下の奇男子」と云われた...今の日本人で、こういったスケールの大きい人物はいないのではないか?と感じました。2023/09/12
チュルちゃん
0
伊勢の地に縁がありそこで松浦武四郎を知った。記念館でも紹介されてた内容があり楽しく読めた。旅好きと言ういわば個人の趣味が高じて蝦夷地調査、アイヌの記録と言う偉業に昇華していったのも凄い。ただ、アイヌへの搾取については結果的には何もできなかった。でも、アイヌの人に寄り添って記録を後世に遺したのは「何もできなかった」には入らないと思う。本書は明治16年の場面から始まり、河鍋暁斎の娘のお豊ちゃん視点で話が進む。松浦老人が昔を語る形式で。途中、そんな上手い偶然ある?と思ったけどどうやら本当のようで驚いた。2024/04/14