内容説明
亜紗は茨城県立砂浦第三高校の二年生。顧問の綿引先生のもと、天文部で活動している。コロナ禍で部活動が次々と制限され、楽しみにしていた合宿も中止になる中、望遠鏡で星を捉えるスピードを競う「スターキャッチコンテスト」も今年は開催できないだろうと悩んでいた。真宙(まひろ)は渋谷区立ひばり森中学の一年生。27人しかいない新入生のうち、唯一の男子であることにショックを受け、「長引け、コロナ」と日々念じている。円華(まどか)は長崎県五島列島の旅館の娘。高校三年生で、吹奏楽部。旅館に他県からのお客が泊っていることで親友から距離を置かれ、やりきれない思いを抱えている時に、クラスメイトに天文台に誘われる――。
コロナ禍による休校や緊急事態宣言、これまで誰も経験したことのない事態の中で大人たち以上に複雑な思いを抱える中高生たち。しかしコロナ禍ならではの出会いもあった。リモート会議を駆使して、全国で繋がっていく天文部の生徒たち。スターキャッチコンテストの次に彼らが狙うのは――。
哀しさ、優しさ、あたたかさ。人間の感情のすべてがここにある。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
584
8月の第一作は、辻村 深月の最新作、辻村 深月は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、この夏の夜空を飾るに相応しいコロナ禍ならではの天文部青春譚、爽やかな感動作でした。私は我が家の二人の息子の名前に星の字を使用しています。またそれが、私のニックネームstarbroの由来にもなっています。 https://kadobun.jp/special/tsujimura-mizuki/kono-hoshi/2023/08/01
パトラッシュ
569
中高生にとって夏休みは若さを謳歌する最高の日々なのに、新型コロナ禍で友人と集まって活動する大切な日常を奪われた苦痛は大きかったはずだ。学校に行けなかったり目標としていた大会が中止になるなどガマンを強いられた若者が、オンラインを通じて天体観測という目標のため今しかできない歓喜を掴もうと結集する。不自由だからこそ新しい道を探り、恋愛や別離を挟みながら本当に大切なものを見つけて成長していくドラマは、枯れたオジサンの心をも熱くしてくれる。文字通りド直球の青春群像小説であり、あの頃を経験した人すべてに読んでほしい。2023/07/17
うっちー
476
コロナの与えた影響は世代によっても違うのでしょう。北極星が代わるのは初めて知って感激でした2023/07/19
キューカンバー
454
コロナウィルスによる学校休業・行事自粛の中で育まれる天体観察を通した人間関係を描いた物語。学校も地域も年齢も異なる学生たちが織りなす友情に感動しました。 本日(2024.2.22)、新聞の折り込みで、この本からの文章が「埼玉県公立高校の入試問題」となっていたことに気づきました。オープニングの一問目です。発売から1年も経っていない新刊を問題文に使うとは、埼玉県さすがです。2023/07/24
hirokun
443
星3 コロナ禍における青春小説。今回のコロナ騒動時において、私の生活環境はこの作品とは違い、会社は生活基盤産業で通常出勤をしていたし、家族にも学生がいないこともあり、特に大きな変動がないまま生活を送っていた。この作品を読み、人生の中で限られた学生生活において、大きな影響を受けた人々の事を考えることができた。この作品のように環境変化に対して、自ら変化へ対応する活動を行った人が少しでも多く存在することを期待したい。2023/07/28