川滝少年のスケッチブック

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川滝少年のスケッチブック

  • ISBN:9784065317310

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内容説明

列車内には、学校や職場へ行こうとしている人が乗り合わせていた。
突然、「ダダダダーン」という爆音が鳴り響いて、窓から外を見ると、アメリカ軍の飛行機が間近まで迫ってきているではないか。
操縦席のパイロットの表情まで見えるほど、爆撃機は近くにいる。
明かに、僕らの乗っている列車を攻撃しようとしている。
このままでは死んでしまう。
反射的に、列車から飛び降りた。
(本文より)


 *****
「軍国少年って、おじいちゃんのこと……?」ぼくはページをめくる手を止めて、ひとりごとをつぶやいた。軍国ということばと、優しいおじいちゃんがうまく結びつかない。祖父の絵はとてもユーモラスで、川滝少年はとても可愛くて、列車通学のきびしさも、剣道の時間の痛い話も、すべては笑い話のように読めてしまう。でも、このとき祖父は「まじめな軍国少年」だったのだ。(本文より)


いつだったか、うちの郵便受けに、日本の父から届いた小包をあけてみると、そこに何冊かのスケッチブックが入っていました。そのうちの二冊がこの作品に登場するスケッチブックです。父の戦争体験について、少しは知っていたものの、くわしいことは何も知らなかったので、スケッチブックに描かれている漫画を見て、また、父の書いた文章を読んで、私はとても驚きました。こんな大変な戦争を、父はよく生き抜いてきたものだと、感心もしました。けれども、これらのスケッチブックは、長いあいだ、私の机の引き出しの奥で眠ったままになっていたのです。なぜなのでしょうか。私はその頃、戦争にも、平和にも、関心がなかったからです。日本は憲法で戦争を永久に放棄した平和国家なのだから、戦争や平和について、考えたり、悩んだりする必要はない、と思っていたのです。(後書き)

Twitterでバズった小手鞠氏父のマンガ絵日記、91歳が生き抜いてきた戦争の記憶と記録が漫画でつぶさに表現されている当時のスケッチブックと、その内容から創作された祖父と孫の物語。
戦前戦中戦後、60頁の絵日記を掲載し、戦争だけでなく昭和の懐かしい風俗も味わうことができる資料としても貴重な一冊。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ゆのん

70
『平和だなぁ』と思う事も、感じる事も無く日常を当たり前に過ごしている人が私も含め多い今日だが、過去とは言え決して忘れたり、見ないふりをしてはいけない事がある。『戦争』を実際に体験した人達が少なくなる中、貴重な作品だと思う。悲しみ、悲惨さ、愚かさだけしか残さなかった『戦争』を再び起こさない為にも語り継がれていかなければならない。『戦争は嫌だ』と声を上げる事の大切さ、『戦争を再び起こさない』という強い決意を持つためにも本書を多くの人に読んで欲しい。2023/08/07

たかこ

58
小手鞠るい先生のお父様のスケッチがとても素朴で素晴らしい。昭和な暮らしの1冊目から、軍国少年だった2冊目は、絵が素朴で変わらないだけに時代の変化が重い。戦争はいつのまにか忍び寄ってきて、あっというまに平和を侵略してしまうもの。お国のために戦って、死ぬことに疑いを持たない人を育てるの教育。ただただむなしい、馬鹿馬鹿しい、滑稽、それが戦争だった。私たちは、生き抜いてきた先人たちから学び、「戦場で誰かを殺したり、殺されたりしたくありません」ときちんと声をあげることが必要だ。2023/10/30

よんよん

45
改めて平和である事の大切さを考えた。そしてそこに安心して漫然と過ごすのではなく、平和を守るという意識を持っていなくてはならないと思った。折しも今日は8月6日。何の日か知らない子たちが増えていると聞く。過去の出来事は風化しようとも、未来に向けてこの平和は意識して守らなくてはならないと伝えたいものだ。2023/08/06

まる子

25
小手鞠るいさんの父、川滝喜正さんが軍国少年だった中学生時代に描いたスケッチブックの漫画と文章を、戦争体験として創作。日本の戦争を語り継ぐ人が少なくなったからこそ、過去の事ではなく、憲法で戦争をしないと宣言したとしても、学校で家庭でそれぞれの場所で考えていかなければならない。いつ死ぬかもわからなかったデッドエンドの青春、残酷な事に慣れてしまう感情、玉砕という言葉で多くの命が失われた。敗戦した時の「何のために戦ってきたのだろう」と、そんな事を知らなくて良かった年齢のはずなのに。綺麗な言葉は必要ない。2023/07/10

anne@灯れ松明の火

20
NetGalleyJPご紹介で気になっていたところ、新着棚で。小手鞠さんのお父さんが軍国少年だった頃の思い出を綴ったスケッチブック。そのマンガ絵日記を改めて見直した小手鞠さんは、祖父と孫息子の物語として創作。戦争の恐ろしさ、悲しさが、細かく描きこまれた絵と言葉から強く伝わってくる。そして、あとがきにある通り、「戦争は絶対にいやです、と。声を上げることがたいせつ」。そのためには、こういう本から、事実を知らなくては、と思う。2023/08/14

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