ちくま新書<br> 人口減少時代の農業と食

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ちくま新書
人口減少時代の農業と食

  • ISBN:9784480075543

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内容説明

日本農業にとって人口減少は諸刃の剣といえる。これまでのあり方を一部で壊してしまう一方で、変革の推進力にもなる。農産物の生産や流通は、総じて人手不足で、生産者と流通、販売、消費の間の溝やズレも明らかになっている。ピンチをチャンスに変えるべく、こうした課題に立ち向かう現場がある。生産から出荷までの合理化、消費者と直接つながる商品の開発、物流のルール変更への対応……。世間で思われているほど暗くない、日本農業の未来を報告しよう。

目次

はじめに/第一章 データで見る農と食のいまとこれから/1 増え続ける外国人労働者と待ち受ける危機/2 二〇二四年問題──関東で「あまおう」が食べられなくなる!?/3 集出荷施設の老朽化で青果流通に不安/4 多くの農業集落で存続に黄信号/5 耕作放棄地の増加と懸念/6 農家の減少と高齢化/7 一人当たり三倍の農地を耕す未来/8 もはや主食ではないコメ/9 単身世帯の急増で伸びる加工・業務用/10 食い込むべきは世界の食品市場/第二章 危機にある物流/1 積載率を高める保管施設/2 「あまおう」は関東圏に届くのか/3 北海道新幹線延伸に伴う「並行在来線問題」/4 鮮度を保ったまま大消費地に小ネギを届ける物流とは/5 「保管」という物流の新たな価値/6 「やさいバス」、コロナ禍で主な取引先は飲食店から小売店にシフト/第三章 待ったなしの農業関連施設の再整備/1 農家とドライバーの負担を減らす「東洋一」の選果場/2 イチゴの選果と調製を請け負うパッケージセンター/3 共同選果と産地づくりをセットで/第四章 大規模化への備え/1 集落営農の将来像/2 いま兼業農家を育てる理由/3 農業法人が稲作専門の作業管理アプリを開発した理由とは/4 労働生産性の向上に不可欠なデータ/5 規模拡大の前提となる働きやすい環境づくり/第五章 外国人、都市住民からロボットまで/1 頼みは外国人技能実習生/2 都市住民を産地に呼び込む/3 「アグリナジカン」の試み/4 障害者の就労支援と農業/5 北海道から広がるロボット農機の可能性/6 除草の現在地/第六章 消費者が迫る変化、日本文化を世界へ/1 市場を奪われる国産/2 調理しない未来を予想する農業生産法人/3 不調のコメ、好調のパックライス、冷凍米飯/4 民間発の小麦国産化/5 人口減少でも増えるチーズの需要/6 日本酒の味を変えた輸出の波/7 魅力的な品種、ガタガタの輸出戦略/おわりに/参考文献/初出一覧

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

skunk_c

60
生産者の高齢化による担い手不足が待ったなしになりつつある現状と、社会の少子高齢化に伴う食の構造変化を踏まえながら、多くの先進的事例を紹介しつつその対策を考えている。基本的に成功事例を多く取り上げ、ともすると「暗く」なりがちな話題を明るく持って行こうとしている(しかし決してバラ色には描いていない)ところに著者の思いを感じた。毎年北海道に通い、生産者と話をする機会も得ていた者からすると、納得できることも多い。本書から垣間見えるのは農政のミスマッチ。こうした本を読んだ農政官僚の方々が本気で動き始めることを願う。2023/07/08

tamami

58
思えば「三ちゃん農業の現在」、というようなテーマで学習したのは何時の頃だったろう。コメ一辺倒の主食時代から多様な食材に囲まれる現在に至るまで、私たちは、スーパーの店頭に並ぶ農産物の変化を意識しつつも、バックヤードで展開される日本農業の現在にはあまり注意を払うことが無かったのではないか。本書で展開されるのは、良くも悪くもわが国の農業が抱えている課題や希望を、最新のデータと全国各地に取材した現場の生産者が発した声や、現場で工夫され新たに展開されようとしている農業の姿である。安全で、安価で美味しい食材が提供され2023/05/31

よっち

35
人口減少で日本の農業はどうなるか。農家はもちろん出荷や流通、販売や商品開発などの危機と課題、新たな潮流やアイデアを現場取材、農業のいまを報告する一冊。 生産者の高齢化、物流の2024年問題、集出荷施設の老朽化、農業集落の存続危機、外国人技能実習生頼みの限界、耕作放棄地の増加と懸念、主食がコメでなくなり、伸びる加工・業務用コメなど、顕在化するピンチをチャンスに変えるべく、こうした課題に立ち向かう現場の変革が紹介されていましたが、こうなってくるとやはりポイントは国が政策としてどうサポートしていけるのかですね。2023/06/05

うえぽん

32
人口減少問題への危機感が生産・流通現場に薄いと危機感を持つ2名の農業ジャーナリストによる共著。危機感を煽りつつ、意外に希望も持たせる内容。物流に係る2024年問題によりコスト・時間増で遠隔地産品が首都圏に届きにくくなるが、物流業者が特殊な保管で付加価値を付ける動きも存在。高齢者に偏る農業者人口は今後一気に減少し、従来以上の生産の大規模化、外国人・都市住民・ロボットの活用が欠かせないが、生産性・収益率増に繋がる動きもある。時短ニーズによる加工用野菜やパックごはんの需要も高付加価値化の流れと見るべきだろう。2023/12/18

リットン

7
日本の外食産業は世界有数の規模と多様性なんじゃないかと、海外に行って思ったが、その材料は大半が海外産に支えられているんだろうなぁ。農業かぁ。。当たり前だけど、暑いし、きついし、天候や病気に左右されるし、決まった休みを取りづらいし、正直やりたいかと言われると。。。もちろんサラリーマンのような働き方と違う、目で見てわかるやりがいがあると思うけど、なかなかなぁ。。2023/06/03

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