内容説明
金にあらざる物質を用いて金を精製する錬金術は、古代より人類が追求した見果てぬ夢だった。完全性と永遠性を象徴する金の性質から、錬金術は不老不死の思想とも結びつく。本書ではエジプトの冶金術から中国の錬丹術、アラビアの錬金術を経てルネサンス期に隆盛を見た西洋錬金術の歩みを、摩訶不思議な奥義書の図像とともに紐解いていく。西洋の歴史、思想と密接に並走する錬金術の謎を解き明かす決定版。図版多数。
感想・レビュー
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鯖
21
金あらざるものから金をつくりだす錬金術の歴史。近代化学の母体となったが、化学が分離するにつれオカルトめいていく。両性具有とかせっくすせっくすせっくすとか図表多めで大変なことになってた。後書きで、最新の物理学では中性子線の照射によって錬金術は実現可能なのではとなってるらしく、むしろそっちを知りたかったけど、物理全然わからんから更にちんぷんかんぷんだったろうな。ともかく謎な絵と謎なオカルト話と神話がてんこもりなので面白かった。2023/08/22
maqiso
4
アリストテレスの理論から質料を変性させ金や不老不死を得るという思想が生まれた。錬金術はイスラム世界で発展し、水銀と硫黄が結びついて各種の金属ができるとされた。ヨーロッパには修道会から受容されたが、贋金作りに使えるため禁じられもした。奥義書はわざと難解に書かれ、謎めいた図像がメインのものも多い。黒化、白化、赤化といった反応を繰り返して、男性/太陽/硫黄と女性/月/水銀が結合するというプロセスが描かれる。結婚や両性具有がモチーフとして頻出する。錬金術から近代化学が生じると、秘儀的な部分は切り離された。2023/11/14