講談社現代新書100<br> 今を生きる思想 宮本常一 歴史は庶民がつくる

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講談社現代新書100
今を生きる思想 宮本常一 歴史は庶民がつくる

  • 著者名:畑中章宏【著】
  • 価格 ¥499(本体¥454)
  • 講談社(2023/05発売)
  • ポイント 4pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784065317839

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内容説明

『忘れられた日本人』で知られる民俗学者・宮本常一とは何者だったのか。その民俗学の底流にある「思想」とは?

「大きな歴史」から零れ落ちる「庶民の歴史」。日本列島のすみずみまで歩き、聞き集めた小さな歴史の束から、世間や民主主義、多様な価値、さらには「日本」という国のかたちをも問いなおす。傍流として、主流が見落としてきた無名の人びとの「語りの力」を信じて――。

【本書のおもな内容】
●「庶民」が主役の歴史を構想
●盲目の「」乞食の自分語りに見出した意味
●村をよくするために尽くした「世間師」
●釣り糸を変えると豊かになる
●「寄り合い民主主義」の可能性
●日常生活に潜む「深い心のかげり」に着目
●「ふるさと」を起点として広い世界を見る
●旅に学ぶ――父の10ヵ条
●男性による女性支配の「東西での違い」
●人が人を信じることで人間全体が幸福になる

「宮本の民俗学は、私たちの生活が『大きな歴史』に絡みとられようとしている現在、見直されるべき重要な仕事だと私は考える。これほど生活に密着し、生活の変遷を追った仕事は、日本の近代でほかにはみられないからだ。宮本は庶民の歴史を探求するなかで、村落共同体が決して共同性に囚われてきただけではなく、『世間』という外側と絶えず行き来し流動的な生活文化をつくってきたことも明らかにする。そしてそれは、公共性への道が開かれていたと解釈することができるのだ。また近代を基準にみたとき、さまざまな面で遅れているとされてきた共同体の生活、あるいは慣習のなかに、民主主義的な取り決めをはじめ、民俗的な合理性があったことも裏づける」――「はじめに」より

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100ページで教養をイッキ読み!
現代新書の新シリーズ「現代新書100(ハンドレッド)」刊行開始!!

1:それは、どんな思想なのか(概論)
2:なぜ、その思想が生まれたのか(時代背景)
3:なぜ、その思想が今こそ読まれるべきなのか(現在への応用)

テーマを上記の3点に絞り、本文100ページ+αでコンパクトにまとめた、
「一気に読める教養新書」です!
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目次

●はじめに 生活史の束としての民俗学
「心」の民俗学と「もの」の民俗学
フィールドワークから実践へ
「庶民」の歴史を構想
「思想家」として位置づける
●第1章 『忘れられた日本人』の思想
多様な語り口による叙述
「土佐源氏」とはなにものか?
座談から浮かび上がる「相互扶助」
「世間師」の役割
宮本常一の経歴
「民俗誌」から「生活誌」へ
生活史の束を編む
●第2章 「庶民」の発見
釣り糸を変えると豊かになる
「庶民」不在の歴史
「郷土研究」としての民俗学
民俗文化と無字社会
「ふるさと」という起点
農民文学と民俗
『相互扶助論』からの影響
「残酷」という感情
「単層文化」と「重層文化」
●第3章 「世間」という公共
「世間」の重層性と複数性
常民・民衆・庶民
「移動」からみた列島文化
境を越える旅人
流浪する人びと
農村指導者としての活動と離島振興法への関与
公共性への道をひらく
●第4章 民俗社会の叡智
寄り合い民主主義
共同体における自主性と束縛
女性の民俗的地位
「性」の領域
渋沢敬三が薦めた「傍流」
伝承としての「民具」
「民具学」の提唱
民具・物流・産業
オシラサマに対する独自のまなざし
「祭」で発散されるエネルギー
絵巻物に描かれた庶民生活
●第5章 社会を変えるフィールドワーク
旅に学ぶ――父の10ヵ条
すたれつつある伝承形式
伝承の公共性
文字を知らない住人たち
当事者性からのアプローチ
児童によるフィールドワークの記録
調査される迷惑
「旅」と「観光」
自然環境の捉え方
「写真」を撮ること
出版編集と民俗学
●第6章 多様性の「日本」
日本はひとつではない
「民衆史」の構想
進歩史観、発展史観に対する疑義
戦中の仕事に対する批判
イデオロギーを超えて
「歴史をつくる」ということ
●読書案内

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

trazom

114
恥かしながら、私の宮本常一体験は「忘れられた日本人」一冊のみ。更に、網野善彦先生の「宮本常一『忘れられた日本人』を読む」が良き手引書ではあったけれど、本書は、宮本先生独自の「庶民」や「世間」の受容の仕方も含め、より広い視点から宮本民俗学の見取り図を示してくれてありがたい。「旅する巨人」である宮本先生が、1964年に「今日観光ブームと言われているが、観光客が一体どれほど観光地に住む人たちの邪魔をしてないで寄与しているであろうか」と書いておられるのが面白い。今日的問題への警鐘は60年前から鳴らされていたのだ。2023/09/27

佐島楓

69
読メでよく見かける名前なので、以前から気になっていた宮本常一。ガイドのつもりで本書を手に取ってみた。うーん、やはり「傍流」のひとなのか。現代人にはちょっと驚きの日本の原風景を取材し研究していたかたのようだ。やはり著作にあたるのが一番早そうだけど、いつ読めるかな……。2023/05/31

tamami

53
「講談社現代新書」のシリーズ?「現代新書100」の一冊。近刊に『廃仏毀釈』等の著書がある畑中章宏が、同じ民俗学者で『忘れられた日本人』で有名な宮本常一の「民俗学」を紹介する。宮本は日本列島を隈無く歩き、採話を続ける中で、歴史を作ってきた主体としての民衆を念頭に、庶民史を構想、著作を重ねた。著者は、宮本がフィールドワークを社会変革の実践的な活動に結びつけようとした所に、「思想家」としての独自性があったのではないかとする。以下、宮本の残された著作や活動記録から、現代にも通じる宮本民俗学の特質を広く論じている。2023/05/20

ころこ

48
短いので、読もうとすれば簡単に読める。しかし、理解するのはなかなか難しいのではないか。宮本に対して、学問的な方法論が無いという批判があるようだが、そこには暗黙の前提として残酷で乱暴な価値判断が存在する。日本論では最も強く批判される「世間」に対して、宮本は両義的ないし幾分か肯定的に捉える。ここに価値判断が存在するならば、庶民は労働者という階級となり、宮本のように表象することは出来なかっただろう。民俗学は読み方に意識的にならなければと警戒しているが、案外と多くの読者が同じ感触を持っているのではないか。2023/09/04

つちのこ

39
宮本常一の仕事について簡潔にまとめている。宮本を知る上での入門書レベルの位置づけと捉えた。宮本のイデオロギーの考察では「保守で俗物」と語った一点について、保守的な思想家であると判断を下すところが少し鼻についた。ほんとうにそうなのだろうか。これは宮本本人にしか答えはない。もう一つは柳田國男への思い入れ。フィールドワークの宮本を知れば知るほど柳田の仕事を肯定できずに距離感をもった私だが、ここは庶民派の在野の学者としての宮本の功績をもっと強調して欲しかったと思う。旅する巨人・宮本の人となりはあまりにも大きい。2024/04/17

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