内容説明
日本の宗教研究の第一人者が、宗教という営みの“核心”を明らかにする!
アンデルセンや宮沢賢治の物語をはじめ、文学や芸術における「救い」というテーマは、昔も今も人の心を打つ。この「救い」の教えは、キリスト教、仏教、イスラームなど世界中の宗教において教義の中心となってきた(そのような宗教を「救済宗教」と言う)。なぜ、宗教では「救い」が重要とされ、普遍的な教えとなってきたのか。
一方で、先進国、特に日本では、宗教への信頼が揺らいでいる。しかし、そんな現代社会においても、従来とは形を変えながら求められる“宗教性”があるのではないか。
宗教の起源から現在にまで通じるこのような問いに、救済宗教と文明の歴史をたどることで理解と考えを深め、宗教という営みそのものの核心に迫る。
【内容】
第1章 信仰を求めない「救い」――文芸が表現する救済宗教的なもの
第2章 「救い」に導かれた人類社会――歴史のなかの救済宗教
第3章 なぜ「救い」なのか――文明史に救済宗教を位置づける
第4章 「救い」のゆくえ――「救済宗教以後」を問う
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
193
宗教による救いの力が退いた現代でも、救いを求める心は童話や歌に現れている。救いとは悪や苦などを超えた魂の状態に達すること。でも私はその悪や苦さえ漠然としたまま救いを求めている気がして、それが漠然としていると救いの在り処も見えない…だから、地獄図や悪を悪として描くお話があるのだろう。あと、宗教のわかりづらさは権力構造との補完的または対抗的な関係からも来ていて、そうした社会構造の中で宗教の果たす役割を考えることも大事だなあ。後半、宗教学、社会学、哲学と横断しながらウェーバーやヤスパースらの理論を紹介している。2024/05/12
いとう・しんご
13
読友さんきっかけ。中高生でも理解できるような平明な語り口の本です。途中からボクの大好きなヤスパースが取り上げられ、通奏低音のように鳴り続けているので、さらに嬉しくなりました。昨年3月公刊の本なので、新しめの話題にも対応してくれています。孫ちゃんが中高生になったら読ませたいなぁ、と思う本でした・・・来週、やっと1歳になるんですが(^^;)2024/02/07
乱読家 護る会支持!
6
僕は中学生高校生の時にプロテスタントの信仰を持っていました。入信の理由は、自分は罪深き人間だという、なんとなくの「原罪意識」があったからと今はは思います。 僕の持つ「原罪意識」の背景には、「天罰」や「因果応報」の考えがあると思うのですが、科学を「信仰」している現代人が多く、そのような感覚を持たれる方が少なくなっているのかもしれません。 今はスピリチュアルが流行りですが、教義があり団体に儀式に縛られる団体宗教よりも、「救い」の普遍的部分を汲み上げて、個々の自由な信仰心を尊ぶ人が増えているのではと思います。2023/10/05
ichigomonogatari
5
宗教学者の著者が「救い」に焦点を当て宗教とは何かを考える。世界の3大宗教の成り立ちや「救い」の特徴を分析。また近代以降の宗教学の流れをたどり宗教と「国家」や「階級社会」との関わりを説明する。新興宗教や、スピリチュアリティなど宗教によらない現代の「救い」の形も紹介する。科学の進歩や暮らしの個人化より伝統的な宗教の勢いは衰えてきたが庶民やグローバルサウスではその影響力は増大しているという。苦しみを得たとき、人が救いとなる「心の拠り所」を求めるのは今も昔も変わらない。2024/01/26
S
5
カルトについて知りたいがそもそも宗教についてフワフワした知識しかないなと思い手に取った。宗教学の流れについてやさしく書いてあるのと地味に最後のあとがきがおもしろい。2023/05/09
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