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内容説明
日本を蝕むさまざまな問題は、突き詰めれば私たちの「仕事」観に由来している。資本主義経済下での摩耗を避けたければ、会社のなかの「組織人」として生きるだけでは十分でない。私たちは同時に、社会のなかの「職業人」としても生きなければならないのだ――。本書はこの要請とジレンマを出発点として、働き手と組織が共栄していくための方策を探る。疲弊した日本経済が自壊する前に「職業の社会学」は新たな地平を拓けるのか。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
49
仕事・職業とは、そもそも何なのかを考える。組織の中で、社会の中でを考える。ここ数年、制度として、いろいろな変化が起きていて(起こされているのかも)、表面的なことは違って見えてくるようになった。しかし、その根底にあることは、どうなのかを考える。日々の暮らしを営む上で、欠かせないものがある。ただ、そこに縛られていることを、どう考えるか。そこに気づくのか。ちょうど、そういうことを考えるタイミングだからこそ、出会った1冊かもしれない。ユーモアの精神を、どう維持するかを考えていこう。2024/04/03
よっち
32
際限のない長時間労働、硬直した企業文化、「お客様は神様」に代表される過剰なサービス。疲弊した日本経済が自壊するその前に、職業社会学が新たな地平を拓けるのかを考える一冊。現代日本を蝕む様々な問題は突き詰めれば仕事観に由来しているとして、やりがい搾取を乗り越えるにはどうすればいいのか、池井戸作品が描く組織人の苦悩、組織人と職業人の違い、戦後日本とソ連の類似性、脱ジェンダー化とテレワークなどを論じていて、労働組合強化やジョブ型雇用推進などやや概念先行の印象はありましたが、考えてみるいいきっかけになりなりました。2023/05/18
Mc6ρ助
23
『『ハドソン川の奇跡』が我々に教えてくれる二つ目のことは、「職業別組合」の重要性です。・・企業別組合が企業内の「組織人」をベースにしているのと対照的に、職業別組合は企業横断的なスキルをもつ「職業人」をベースにしています。 ・・職業の社会的役割について自覚的な「職業人」・・彼が守ろうとしているのは、「パイロット」という職業の社会的役割であって、それは、企業に対する忠誠心を上回る(p42)』今野晴貴さん『賃労働の系譜学』の関西生コン事件を読んで日本の職業別組合に未来を見がたく、著者に素直に頷けないのが哀しい。2023/09/17
すいへい
18
私には、仕事の悩みの答えが知りたくて、新書を読んじゃうモードがたまにある。今はそのモード。この本は半沢直樹などを取り上げ、わかりやすい。1日で読了。「組織人」と「職業人」の違いを感じさせられた。古い会社は、職業人として優れたやつが、組織人としても優れていると思う。そして職業人が一番なりたくない組織人のスキルが必要なポストにつけてしまう。だから、イノベーションが起きない気がする2024/04/12
おおにし
16
(読書会課題本)著者はバイク便ライダーを「自己啓発系ワーカホリック」と紹介した人。それが本田由紀氏に批判的に「やりがい搾取」と訂正されて世間に広まったのだった。そんな感じで社会学者にしては現状分析の緩さが目立つ。雇用のグローバル化が進まない労働環境の打開策として、「草の根からのグローバル化」のための田舎就労を提案しているところなど、かなりお花畑な人だと感じた。ただ、大学教員の現状分析は良かった。研究よりも学務にやりがいを感じている教員の存在が大学のパフォーマンスを低下させているという分析は興味深い。2024/01/17