内容説明
革命をもたらす3.5%の力
「ある国の人口の3.5%が非暴力で立ち上がれば、社会は変わる」。
この「3.5%ルール」で一躍有名になったのが本書の著者で、ハーバード大学ケネディ行政大学院教授のエリカ・チェノウェスだ。
本書は、この「3.5%ルール」をはじめ、市民的抵抗の歴史とその可能性を探る試みである。どこか弱々しく、悲壮なイメージがつきまとう非暴力抵抗だが、実証的にアプローチしてみると、その印象は一変する。
過去120年間に発生した627の革命運動の成功率を見てみよう。暴力革命と非暴力革命とではどちらが成功したのだろうか?
1900年から2019年の間、非暴力革命は50%以上が成功した一方で、暴力革命はわずか26%の成功にとどまる。
これは驚くべき数字である。なぜなら、暴力行為は強力で効果的であるのに対して、非暴力は弱々しく効果も乏しいという一般的な見方を覆す数字だからだ。
他方、この10年で非暴力抵抗の成功率は下落傾向にある。「スマートな独裁」とともに、運動がデモや抗議に過度に依存していることが背景にある。
社会を変革するための新たな方法論の本邦初訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
50
O図書館。市民的抵抗とは、非武装の民衆がさまざまな活動を組み合わせながらおこなう闘争の形態(61頁)。なんとなく、自爆テロと、焼身自殺の違いについて、よくわからなくなってしまった。また、考え直してみたい。2023/03/16
slowpass
9
P86〜93の並行機関についてのみ。並行機関は既存の制度に並行して、本来あるべき仕組みや人と人との関わり方などを実現させるものと理解。たとえば、国の制度を変えて必要なところに行き届かせようとすることに対して、「子ども食堂」のように、直ちに必要なものを民間の有志がお金が必要ない食事を提供する場を設けたりすることは並行機関と言えるだろう。建前的にはそういうことは行政の欠陥であり行政が変革されなければいけないが、自分たちで自分たちに必要なものを直接に作り出す行為それ自体が人間関係を育て、人を主体的にする。2023/04/24
Akiro OUED
5
権威主義的な政府に抵抗するなら、非暴力的活動のほうがうまくいく。非暴力的な市民的抵抗運動の成功例として、チュニジアやエジプトを席巻したアラブの春がある。非婚化や少子化は、権威主義的な日本の行政機関への市民的抵抗の現れかもしれないね。これ、非暴力的抵抗運動の成功例となるか。2023/03/06
sk
4
市民的抵抗の3.5%ルールを提唱した本。勉強になる。2023/09/03
フクロウ
4
非暴力の市民的抵抗が、暴力を用いる抵抗よりも約2倍、独裁や権威主義体制を倒してきたという直観に反する結論を、統計データなどから実証する極めて面白い研究。しかし、たとえばナチスがユダヤ人虐殺をガス室で行うようになった理由は、銃殺だと効率が悪いだけでなくナチス側の処刑人が精神を病むからということを考えれば腑に落ちる。非暴力の抗議者を虐殺することは、権力側につく兵士や警察官にも難しい。成功の鍵はなるべく多くの量・多様な階層の市民の参加の確保と政権の支持基盤たる軍や経済階層の一部又は全部に離反を促せるかどうか。2023/03/20