内容説明
牛、馬、猪、鹿、鴨、鳩、鯨、羊、すっぽん、内臓……
「人はなぜ肉を食べるのか」
問いを掲げた平松さんは、日本全国十か所をめぐり、
十種の「肉」と人とのかかわりを徹底取材。
ひとつの文化として肉をめぐる諸相をとらえ、
動物とその肉について、見て、聞いて、食べて、
深くその根源を考えた前代未聞のルポルタージュ。
胸骨の端にそっと指を入れて横隔膜といっしょに引き上げると、
紫色に光る かたまりがぽろんと現れた。 (中略)
ぷりっぷりのレバーの一片をそっと口の なかに入れた。(本文「4章 鳩」より)
「生きもの」が「食べもの」になるまでの間には実に様々な工夫や技術が介在し、
「うまい肉はつくられる」ことがわかる。
信念を貫き、魅力的な多くの日本人の「仕事」の
歴史にも光を当てたエキサイティングな傑作ノンフィクション。
解説=角幡唯介
※この電子書籍は2020年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Shoji
30
我々が普段食べるお肉からあまり食べることのない野生獣まで、猟や解体の様子を通して「命を頂く」ことの大切さを伝えています。動物の種類や部位によって肉質や味が変わってくることはもちろん、最も適した調理方法を実際の食肉加工の現場取材を通じてルポしています。動物が命を育む、猟をする方や畜産農家の方がいる、命を屠る方がいる、食肉加工する人がいる、流通させる方がいる、調理する人がいる、そしてお肉が食べられる。食べ物を粗末にしてはいけないな。考えさせられた。2023/03/23
こぺたろう
8
このところ、仕事で夜に読書をする時間が十分に取れません。休日の日中は大抵遊びに出掛けるので、これまた読めず。ただ今日は子供が発熱したので、寝ている合間に一冊読了。魚はまだしも、肉類を食べるため、動物を解体することはまずありません。本書で紹介されるような、生産現場に思いを馳せる機会というのは大切だ。2023/04/30
niz001
5
各章が掘り下げたら1冊書ける濃密さ。すごい執念。すっぽんのから揚げも美味いよ。2023/03/22
takakomama
3
羊、猪、鹿、鳩、鴨、牛、内臓、馬、すっぽん、鯨の肉を食べるまでに関わる人々を丁寧に取材したノンフィクション。狩りをする猟師、動物を育てる生産者、解体業者、料理人のプロフェッショナルな仕事ぶりに圧倒されました。人間が自然に合わせて、動物たちに愛情をかけて育てています。害獣という言い方は、人間の都合の勝手な言い分ですね。すべての食べ物は、命をいただいていると改めて思いました。2023/07/11
Yuka
3
エッセイストというより食のジャーナリストのよう。ジビエに対するイメージも今作でガラリと変わって、ホルモンとかすっぽんとか何となくのイメージで避けがちだったものにも俄然興味が湧いてきました。 会社でも取り扱ってる短角牛は値段だけ見て高いから…と敬遠していたけれだこれも頒布会に申し込もうかなと思うくらい(影響されやすい) とりあえず9月に大阪旅行の予定があるので「ツバクロすっぽん食堂」には行ってみたい😍2023/07/09