内容説明
第二次世界大戦下、軍曹の西隈はビルマで現地の労務者をまとめる任務に就く。その一環としてペストの予防接種を勧めるが、部落の長老は頑なに拒む。対して、軍医見習士官はあまりに辛辣な演説を打つ/「仏道に反して」。肉体労働に適さない腰巻きのような民族衣装のロンジーを穿き、昼寝を欠かさぬビルマ人。非難した西隈に、部落長が放った言葉とは?/「ロンジーの教え」。シビアな軍務と、安穏に暮らすビルマ人との狭間で、日本軍が達した境地を描く五編。「戦場」を舞台にした文化人類学小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じーにあす
32
5つの連作短編集。第二次世界大戦下、一人の日本軍兵士から見たビルマ。同じ仏教を信じる国同士ではあっても文化の違いはあり、その葛藤などが描かれている。戦争モノではあるけれど書かれているのは人と人との人間関係だったように思う。質素で信心深いビルマ人のような生活はもしかしたら理想的なのかもしれないなとも思った。戦争がなければこの人達はどういった関係を築いたことだろうか。争いを好まず自然に抗わない考え方は理想的ではあるけれど、戦わなければ占領され国を守ることは出来ない現実。この後に地獄のインパール作戦が始まる。2023/10/07
汲平
6
ビルマの山村で現地の人々を宣撫し、労務提供を依頼し、予防接種に努める。考えるまでもなく現地の人々との信頼関係が重要な任務で、でもずっとそこに留まるわけでもない。その距離感が生み出す感傷が心に残る。すでにこの地域を去った前任の部隊長であった中津嶋少尉の存在感が大きく、中津嶋から日本語を教わったモンネイの軍人言葉がおかしくて、哀しい。信頼を築き、別れて行く。それは戦争だけではないんだけど。2023/06/30
なつくん
4
第二次大戦のビルマを舞台にした日本兵と現地民との交流を描く連作集。この作家さん同じテーマで多くの著作があるけど、なぜこんなニッチなテーマに固執するのは不思議だが、意外と面白い。2023/04/01