講談社選書メチエ<br> 失格でもいいじゃないの 太宰治の罪と愛

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講談社選書メチエ
失格でもいいじゃないの 太宰治の罪と愛

  • 著者名:千葉一幹【著】
  • 価格 ¥1,815(本体¥1,650)
  • 講談社(2023/02発売)
  • GW前半スタート!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~4/29)
  • ポイント 480pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784065282113

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内容説明

「生まれて、すいません」「待つ身が辛いかね、待たせる身が辛いかね」「恥の多い生涯を送ってきました」
いくつかの盗作があり、薬物中毒者でもあり、心中事件を繰り返し、最後は妻子を残して愛人と38歳で入水心中を遂げた作家は、今なお多くの読者を惹きつけています。
三島由紀夫に毛嫌いされて、檀一雄を激怒させたが、それでも無視できない魅力を感じていました。
太宰は、ダメな人間であり、ダメな作家であったからこそ、その輝きが永続するのだと、著者は言います。また、現代だからこそ、読まれるべき作家なのだとも。
太宰の作品が持っている、弱者に寄り添う独特な視線、未来志向とはほど遠い、退嬰的なあり方、自堕落なあり方は、私たちが弱々しく生きる自由があり、弱々しくしか生きられない私たちに寄り添う力があるのです。
弱い立場にあった(今なおある)「女」という存在を太宰はどう表現しているのかを、女言葉を使った作品の解読から読み解く「第一章 言語的異装趣味 「女」は文学に何をもたらしたのか」。
戦前・戦後を挟んで、人間でなかった天皇は、「人間」となりました。第一章の議論を受けて、多くの周りの人々を喪失した経験を生き残り(サバイバー)として、生きながらえる時の罪悪感(ギルト)をどう捉えるのかという視点から、作品を読み解く「第二章 人間失格と人間宣言 二人のサバイバース・ギルト」。
そして、「第三章 治りたがらない病人 太宰と三島」では、第二章の議論を受けて、二人の対照的な作家のあり方から、戦後日本における、生き方の困難への立ち向かい方を読み解いていきます。
作家太宰治の魅力を根本から問いなおす一冊です。

【目次より】
序 章 ふたつの失格
第一章 言語的異性装趣味 女生徒の見た世界
第二章 人間失格と人間宣言 太宰治と天皇
第三章 戦後作家のサバイバル 太宰と三島
終 章 私的太宰治論あるいはすこし長いあとがき
ほんとうのおわりに

主要参考文献
初出一覧

目次

序 章 ふたつの失格
第一章 言語的異性装趣味 女生徒の見た世界
第二章 人間失格と人間宣言 太宰治と天皇
第三章 戦後作家のサバイバル 太宰と三島
終 章 私的太宰治論あるいはすこし長いあとがき
ほんとうのおわりに

主要参考文献
初出一覧

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

117
あまりのダメ人間ぶりに辟易させられる太宰治の文学が今も読み継がれるのは、そこに描かれた競争社会に背を向けた失敗者に共感するからと著者は見る。恥さらしで非倫理的な生き方をしていると自覚すればこそ、開き直って苛酷な現実に取り残された弱者のダメっぷりを書くのが太宰流なのだ。それは確かに優れた文学を生む母体となるが、作家には病人であり続けることを求める。病を克服し健康な心と体を取り戻せば、今度は作家としてダメになってしまう。弱く女々しい自分を嫌悪して自死までした太宰に、人は己の弱い部分を重ねてしまうのではないか。2023/04/05

trazom

115
私は太宰治が苦手。自堕落な生き方も、読点でポツポツ切れる文章も…。そんな偏見の一掃を願って本書を手にする。前半、「女生徒」「斜陽」の成立にフェミニズムを見るのは賛成しないし(私には剽窃以上の何物でもない)、太宰と天皇との関係の考察も腑に落ちない。でも後半で、太宰が家族愛や戦後民主社会に素直になれない背景が、サバイバーズ・ギルトだとする考えには共感する。正に「トカトントン」。あれほど太宰を嫌悪した三島由紀夫に対する論考も秀逸。三島を対置すると、弱くしか生きれない人に寄り添ってくれる太宰の意味が浮彫りになる。2023/05/03

ゆのん

60
中学生の時の夏休みの宿題で課題図書の中田から選んだ『人間失格』。当時の私には衝撃的な内容で、更に真面目過ぎる中学生だったので妙な潔癖から嫌悪に似た感情だけで読み終えた。以来、相当な大人になってから再度太宰作品を再読する事となる。大人になってから読んだ太宰作品は面白かった。今回この本を読んだのは太宰治についてもっと知りたいと思ったからだが…太宰初心者には少々難しい内容だった。とはいえ、初めて知った事や、執筆された当時の事は興味深く読んだ。2023/02/18

tamami

49
新潮文庫では、漱石の『心』に次いで、太宰の『人間失格』が読まれているという。著者は、「生活人としてもダメで、ひょっとすると作家としても「失格」かもしれない太宰だが、しかしそのダメさ、退嬰的な部分が、むしろこうした世の中だから人を引きつけるのではないか、そういう太宰の作品の持つ意義や魅力に迫ろうというのが本書の趣旨」と記す。いわば太宰作品売り込み本!そのままに、太宰の「言語的異性装趣味」で書かれた『女生徒』や愛人の日記を元にしたという『斜陽』などの作品に触れることで、生きにくい現代の諸相に迫ることができる?2023/03/31

Y2K☮

36
太宰と三島は表裏一体。前者は己の弱さを生き残るための武器へスライドさせ、後者は弱さを克服せんとする強靭な意志を鎧に換えた。しかしいずれも虚構を通して。実際の太宰には狡猾な強さが見え隠れし、三島の雄々しさはどこか戯画的と映る。たしか「豊饒の海」第四部を石原慎太郎が酷評していたが、たぶん三島の実像を見透かしていたのだろう。だが虚構としての文学でしか人々の心に訴えられぬものもあるし、満更嘘だけでもないからこそ時代を変える先鞭となり得る。「女生徒」の元になった有明淑の日記は「斜陽日記」みたいに広く知られてほしい。2023/05/30

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