内容説明
学校で習って、誰もが親しんでいる地図記号。だが、実はまだまだ知られていないことも多い。日本で初めての地図記号「温泉」、ナチス・ドイツを連想させるとして「卍」からの変更が検討された「寺院」、高齢化を反映して小中学生から公募した「老人ホーム」……。地図記号からは、明治から令和に至る日本社会の変貌が読み取れるのだ。中学生の頃から地形図に親しんできた地図研究家が、地図記号の奥深い世界を紹介する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
六点
123
明治時代に日本国土を覆い尽くさんとして始まった地図作成事業は、「国内戦で使うかもしれない」と言う強迫観念を持って整備された。道や橋の種別、塀の材質など「何をそこまで」と思う物も多い。今では大部分が統合されているが。地理院の地図の修正は、電子地図を中心に行うとの事となり、今後、紙の地図を目にすることはどんどん減っていくであろう。修正も容易になるだろうし。歴史においていかれそうな不安にかられた、地図好きの嘆きは深い事であることだよ。2023/01/22
へくとぱすかる
61
小学校の社会科がなつかしい。明治以来、地図の記号はどんどん変化して現在に至っていることがよくわかる。発電所の記号が今も健在なのはうれしい。子どものころ、いろんな本や資料を見て、たくさんの地図記号を覚えようとしていた。今これを読むと、使われなくなった記号まで、丸ごと一緒にしていたことが判明。探せば見つかるヴァリエーションではなく、時代の重なりを見ていたことになる。もっとも地図は一気に書き変えられるものではなく、更新にある程度の年数を要するらしいので、子どものときの努力も、そんなに無駄ではなかったと思いたい。2023/01/16
yamatoshiuruhashi
59
航空写真やGoogleマップが無い時代に、地図で詳細な情景を思い浮かべるには地図記号が必須である。その地図記号も時代により不変ではなく度々付加や統廃合が行われていたとは知らなかった。桑畑のマークは小学生の時に地図の授業が始まったら最初に行われたテストに出てきた問題だったが、桑畑の激減で廃止されているそうだ。桑は蚕の餌になるばかりでなく建具の高級素材である。桑の障子は供給困難になるのだろうか。地図記号の変遷から離れたことを想像してしまったが、地図を読み見知らぬ土地を想像することは楽しみの一つである。2023/01/24
雲をみるひと
28
地図がテーマのトリビア集的エッセイ。グーグルマップの普及なので地図を見る機会が減っている中、地図の面白さを教えてくれる一冊。多作の作者なので流石に見たことがある内容が多いのは否めないが、新出と思われるネタも含まれているのは流石。2023/09/11
ようはん
16
小学生の頃地図記号が好きで自由研究に日本と海外の地図記号の比較をした事もあったのを思い出す。時代により変化があり、昔はこういう地図記号があったのかと知ると同時に工場の記号はもう使われていない事に驚く。2023/07/05