内容説明
私たちは,いまどのような社会を心に描き,いかなる価値に基づいて生きているのだろう。本書はそうした「社会の心」の姿を調査データから論じる。「総中流」や「格差」など,人々が心に描いてきた社会の変化を計量社会学から再検証し,更新する最新の現代社会論。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Toshiyuki S.
2
現代を生きる日本人の心の動きの集積、すなわち「社会の心」について実証的なデータにもとづき論考をすすめたもの。「総中流」「格差社会」などがどのように成立したのか、そのカラクリをデータの解析と社会学の理論を用いて読み解いている。「総中流」が崩壊し「格差社会」が成立した背景で、階層に対する日本人のリテラシーの高まりと社会における集合意識(近代‐伝統を両極とする価値システム)の社会からの浮遊が進行していた、と著者は主張する。新しい実証主義的現代日本論として、とても興味深く読むことができる。2015/03/05
田中峰和
2
「社会の心」とは日本人の社会意識のこと。それが総中流社会(1980年代)から総格差社会(2010年)までの間に、どう変化し何を意味しているかを問うのがテーマ。サブタイトルの「計量社会意識論」とは著者が主唱した調査計量の実践によりアプローチする研究。70年代以降を総中流社会と称した階層意識研究に疑問を投げかけた地点から始まる。「文化の社会学」という概念と55年から実施されたSSM調査データの分析を統合し、より科学的な分析を重視する。三浦展の「下流社会」を独自に捻じ曲げた与太話と切り捨てる著者の毒舌が面白い。2014/10/09
soaps
0
社会調査の聞き方による差異を見逃したデータの読み誤りで「総中流現象」が説明されてしまったという仮説(総中流は階層帰属意識調査からは説明できない幻影)/「総格差社会」の現代は、かつてに比べ自らがどの社会階層に属するのか(地位アイデンティティ)に対してのリテラシーが高まっている/総中流・総格差どちらも客観的データがあるわけではない「社会の心」/「○○主義」(集合意識)を個人が参照しなくなった(即自的になった)/地位アイデンティティの階層性の高まりと伝統-近代主義の退役/ 2021/07/05