ちくま新書<br> 思想史講義【戦前昭和篇】

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ちくま新書
思想史講義【戦前昭和篇】

  • 著者名:山口輝臣【著者】/福家崇洋【著者】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2022/12発売)
  • GW前半スタート!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~4/29)
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  • ISBN:9784480075321

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内容説明

「大正デモクラシー」から「ファシズム」・戦争へと移行した戦前昭和期は「国体」の再構築と「文明化」の超克がめざされた時代だった。大正期の民主化運動は衰退し、アジア回帰、国家総動員、文化主義は戦前昭和期にアジア進出、総力戦体制、日本主義・国体論へと展開。大正期の「文明化」との差異化が「転向」の時代をへて「近代の超克」へ推し進められていった。様々な思想がせめぎ合い、複雑に絡み合いつつ日本がいかに戦争へと向かい、戦争を遂行したかを最新研究に基づき検証する。

目次

刊行の辞……山口輝臣・福家崇洋
はじめに……福家崇洋
「大正デモクラシー」からの移行
「転向」と「反ファシズム」の時代
挫折の「昭和維新」と戦時変革
虚構の共同性──「八紘一宇」と「大東亜共栄圏」
「近代の超克」と「道義」の提唱
第1講 多元的国家論とギルド社会主義……織田健志
丸山真男の述懐
「社会の発見」
政治の「社会化」
中島重の多元的国家論
ギルド社会主義と「自由」
マルクス主義の覇権
第2講 第二次日本共産党と福本イズム……立本紘之
第一次日本共産党解党と党再建ビューロー結成
福本和夫の登場と「福本イズム」の隆盛
第二次日本共産党再建と日本社会運動の変容
二七年テーゼとその受容
日本共産党公然化と相次ぐ弾圧
第二次日本共産党期の運動が残したもの
第3講 講座派と労農派……黒川伊織
講座派=共産党系マルクス主義者
労農派=非共産党系マルクス主義者
マルクス主義社会科学の発展
非合法共産党と無産政党各党
猪俣津南雄と野呂栄太郎──「プチ・帝国主義」論争から戦略論争へ
「天皇制」の発見──「三二年テーゼ」と『日本資本主義発達史講座』
山田盛太郎と向坂逸郎──戦後への射程
第4講 恐慌と統制経済論……牧野邦昭
根強い経済自由主義
金解禁と産業合理化による経済の効率化
金解禁論争
昭和恐慌と経済統制の始まり
ヴィジョンとしての「国防国家」
国家総動員、そして経済新体制へ
第5講 国家社会主義と満洲事変……福家崇洋
高畠素之と「国家社会主義」
「支配統制機能」と「大衆」
満洲事変と無産政党の再編
「ファシズム」との共鳴と対峙
日本主義との対立と「現実的革命主義」の可能性
第6講 転向……近藤俊太郎
転向論の困難
治安維持法と転向政策の浮上
日本共産党労働者派と平田勲
佐野学・鍋山貞親の転向声明
転向と宗教
思想犯保護と「日本精神」
統治と宗教性
第7講 農本主義の時代……藤原辰史
農本主義の骨格
農本主義論争の概観
横井時敬──「昭和農本主義」へのバトン
室伏高信──都市的な「土への回帰」論
橘孝三郎──労働と思想
権藤成卿──共同体と自治
農学者・農政官僚たちの農本主義
農本主義の遺産
第8講 昭和の日本主義……福間良明
「国体明徴」の狂信?
「学術維新」への情熱
護憲のラディカリズム
戦時体制との相容れなさ
「正しさ」の挫折
日本主義と学歴
下支えする教養主義
旧制専門学校と教養主義の温度差
第9講 国体明徴論……昆野伸幸
美濃部憲法学説の位置
天皇機関説事件から国体明徴運動へ
国体明徴論の盛行
『国体の本義』刊行
『国体の本義』批判の噴出
第10講 政治的変革の夢──維新・革新・革命……植村和秀
夢とその行く末
老政治家犬養毅の夢
昭和維新運動の夢
明治維新と昭和維新
世界維新の夢
世界革命の夢
第11講 自由主義……松井慎一郎
「自由主義の 落」と河合栄治郎
下部構造としての理想主義
「第三期の自由主義」
「国民的自由」と植民地認識
戦争と自由主義
第12講 反ファシズム人民戦線論……福家崇洋
越境する反ファシズム
文化擁護の統一戦線
コミンテルン第七回大会と「日本の共産主義者への手紙」
『世界文化』と日本の「人民戦線」
社会大衆党の「人民戦線」批判
抗日民族統一戦線と日本「解放」
第13講 国家総動員論……森 靖夫
国家総動員とは何か
第一次世界大戦と国家総動員論の登場
資源局の誕生
政党内閣の国家総動員計画
政党内閣崩壊後の国家総動員論──企画院成立と松井春生の挫折
国家総動員法の成立
第14講 戦時下のアジア解放論……米谷匡史
戦時下の「東亜」広域圏論
満洲事変と「五族協和」論
日中戦争期の「東亜新秩序」論
さまざまな「東亜協同体」論
「大東亜共栄圏」論への膨張と変質
第15講 京都学派の哲学……藤田正勝
京都学派とは
相互批判から生まれた創造性
モットーは主体的思索(ゼルプストデンケン)
「無」の哲学
現実の世界への関心
京都学派の歴史哲学
座談会「世界史的立場と日本」と「近代の超克」
座談会「近代の超克」から見えてくるもの
コラム1 柳宗悦と民芸運動……土田眞紀
コラム2 プロレタリア文化運動……立本紘之
コラム3 民俗学と郷土研究……重信幸彦
コラム4 昭和の科学思想・技術論……金山浩司
コラム5 生活綴方運動……須永哲思
コラム6 平泉澄と「皇国史観」……若井敏明
コラム7 戦時期のキリスト教……赤江達也
コラム8 戦前日本の毛沢東観……石川禎浩
コラム9 一国一党論……渡部 亮
コラム10 女性動員論……堀川祐里
コラム11 日本浪曼派……岩本真一
編・執筆者紹介
人名索引
凡例

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

無重力蜜柑

13
ずっと積んでいたシリーズ。修論に向けてこの巻から読んでいく。各論を簡潔にまとめて参考文献まで紹介してくれるスタイルで、文献蒐集や初めの一歩としては優秀。当然ながら掘り下げは足りないので勉強が必要。戦前昭和といえば右翼の時代というイメージ。自分もそういう論点が気になって手に取った本だが、国粋主義/帝国主義/軍国主義の中にも左翼的な視点が、「転向」というよりは国家体制の「活用」という形で包摂されているのが面白い。この辺を客観的に研究できるのも、当事者が完全に亡くなっていくこれからのことになるのだろう。2023/08/22

くまくま

4
「転向」「国家総動員論」などこの時代を色濃く表す15のテーマ。それぞれ濃密で聞き慣れない項目もあり、なかなか時間がかかってしまった。国家総動員というと同法を利用した軍部の暴走が第一にイメージされるが、むしろ軍需と産業のバランスから軍を統制するために誕生したというのは意外だった。2023/02/02

onepei

2
意外に多様性があるのを知ったのが収穫か2023/02/26

掬水

1
座談会「近代の超克」に参加した下村寅太郎が他の多くの論者を「近代」を他人から与えられたものとみなし、故に自らにそれを担う責任はないから単純に日本的なるものに復帰すれば問題は解決すると考えていると批判した上で超然とした態度を取るのではなく自らも「近代」に生きているということを自覚するように促しているのは、この集団にあっては貴重な存在であったのだろうと第15講京都学派の哲学を読んで思いました。2023/07/23

つじー

1
思想から昭和史を読み解くと、事実を追うだけではわからない発見だらけ。知的興奮がドバドバ。僕が興味持ったテーマは「講座派と労農派」、「転向」、「自由主義」、「国家総動員論」、「女性動員論」あたりかな。河合栄治郎、石橋湛山、清沢洌といった戦前日本の著名リベラリストの思想の源流がクラークを中心とした札幌バンドにあったという話が個人的な大発見で興奮した。北海道民が思っている以上にクラークという存在は日本にとって非常に偉大だったのかもしれない。2023/03/01

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