新潮文庫<br> ネイティヴ・サン―アメリカの息子―(新潮文庫)

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ネイティヴ・サン―アメリカの息子―(新潮文庫)

  • ISBN:9784102402610

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内容説明

1930年代、大恐慌下のシカゴ。アフリカ系の貧しい青年ビッガー・トマスは、資本家令嬢で共産主義に傾倒する白人女性を誤って殺害してしまう。発覚を恐れて首を斬り、遺体を暖房炉に押し込んだその時、彼の運命が激しく変転する逃走劇が始まった――。現在まで続く人種差別を世界に告発しつつ、アフリカ系による小説を世界文学の域へと高らしめた20世紀アメリカ文学最大の問題作が待望の新訳。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

62
意識的/無意識的な黒人差別が横行していた社会状況と貧困の為とはいえ、『はなればなれになって』の主人公たち同様に全く、同情ができないビッガー。白人の店への盗みを企てるものの実はそんな計画が無くなればいいと願い、それでも虚勢を張り、自分に反論したり、指摘する同胞に暴力を振るう。女性を乱暴に扱う。目上(白人)には従順なものの内心は憎悪を募らせながらも相手の挙動を過大に捉え、怯える。そんな屑さから彼は本当にどこにでもいる人間なのだ。そんな彼が陥った袋小路は白人の女性のある意味、性質の悪い善意が発端となった皮肉。2023/04/30

キムチ

58
訳の良さで読むこと自体は易いが読み下すことの辛さがこれまでに無かったほど呻吟、苦悩の連続。連続レイプ、殺人犯ビッガー、後半では担当弁護士マックスが軸となる心理描写がこれでもかというほどに突き付けられる。事件勃発 経過の反響駆け引きの後、ほぼ3割強の法廷論争。特にこの論点の咀嚼が容易でない。これほどまでに弁護士が滔々と語り続けられたか?非現実的では?等と思ったり。そもそもビッガーの犯行がありえたかすら?骨まで焼き尽くせる?臭いの凄さを隠せたか等。分断、民族問題と小さな島国日本の人間は考えるだろうが。。2023/06/14

ケイトKATE

33
アメリカ社会における黒人差別の根深さをリチャード・ライトは徹底的に追及した。主人公ビッガーが犯した殺人は、残酷かつ身勝手なものである。しかし、ライトはビッガーの犯罪の背景にあるものを暴いた。黒人はアメリカ社会において白人とは同じ世界にいない。しかも、白人より貧しい生活を強いられ、常に支配下に置かれ思考停止していることに。『ネイティヴ・サン』で問われている問題はアメリカだけのものではない。世界中で人種、階級、宗教、経済から生まれる差別によって悲劇が起きていることに気付かされる。多くの人に読まれてほしい傑作。2024/09/10

tsu55

26
新潮社の広告の「ブラック・ライブズ・マターはここから始まった。」という惹句にひかれて読んでみたが、黒人として白人が支配する社会で生きることの息苦しさ、恐ろしさがひしと伝わってきて、途中で何度もページを閉じてしまった。ハラハラドキドキが止まらない。そして考えさせられる小説。【ガーディアン1000】2023/03/15

ねむ

18
1930年代のシカゴを舞台に、黒人青年ビッガーが白人の富豪宅で運転手の仕事についたことから起こる悲劇。泥酔した富豪の娘を深夜、部屋に送り届けたところに、目の見えない母親が現れたため、ビッガーはレイプを疑われるのではとパニックになり、娘の顔に枕を押しつけ殺してしまう。その浅はかさも、差別される黒人に同情的な白人に対するビッガーの怒りも、堂々めぐりする悩みも、彼個人のものというより固定化した社会構造の中で虐げられる黒人の典型例として描かれている。100年近くたっても変わらぬ現実、日本も他人事ではないと感じた。2023/07/15

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