内容説明
古いフランス製の家計簿に書きこまれた膨大な文書を翻訳してほしい、と文化人類学者河島からの依頼。最後にVincent van Goghと署名があって、ゴッホ直筆かもしれない。しかも署名付き家計簿は二冊存在するという。贋作ならば、なぜ複数必要だったのか。ぼくは翻訳を進めるいっぽう、家計簿の来歴を追った。だが、謎は深まるばかりだった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
207
タイトルに魅かれて読みました。長野 まゆみ、初読です。 原田マハのアート小説っぽいのかなと思いつつ読んだのですが、アート小説としても、ミステリとしても中途半端でした。ゴッホは狂気の芸術家のイメージですが、速読家で複数の言語を操るほど知的だとは思いませんでした。 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=00003704622023/02/24
kei302
70
登場人物の会話が楽しくてしゃれている長野さんらしい作品を存分に味わうことができた。あの“ゴッホ”が家計簿をつける話? まさかね。アート系ミステリ風味入りのエンタメで、読み応えがあった。興味を引かれたのは、「森の中のお城」のストーリー展開と解釈を話し合う場面。実在する絵本なのかもしれないと思わせるほどリアリル。インクと画材の話も興味深かったです。私たちが今見ている絵の色は、書かれた当時の色ではない! 考えもしなかったです。最後の、種のオチを読んで、「ひまわり」の絵を検索してしまいました。2022/11/29
優希
61
ある程度美術の知識がある方が物語に入っていきやすいように思いました。ゴッホのひまわりをガジェットにしているせいか、過去の芸術に思いを馳せずにはいられません。ミステリーであり、幻想的でもある色彩が美しいのは長野さんならではですね。2022/12/25
ぽてち
42
文化人類学者の河島から届いた小包には、19世紀のフランスで作られた家計簿の写しが入っていた。依頼はそこに記された書き込みの翻訳で、Vincent van Goghの署名があった……。果たしてこれは真筆なのか? 内容はどのようなものなのか? という疑問と期待をはぐらかすかのように話はどんどん違う方向に進む。トリビアの披露としか思えない。しかし驚くべきはここからだ。どう考えても本筋には関わらないと思っていたことが結末に向けて収斂していき、最後には見事に当てはまり全体像が現れる。知的なパズルのような作品だった。2022/12/24
canacona
28
お久しぶりの長野さん。ゴッホの謎解き?と思ったら、家族の物語だった。耽美で幻想的なイメージだったけど、意外なほど普通の家族の歴史物語。ゴッホの書き込みのある家計簿から物語が始まり、話があっちこっちに広がる。いろんな話が展開されるので、相関図を描きながら読むのが良かったかも。私は結局迷子になりつつ読み進めました。それでも、広がりに広がった欠片が静かに収束していく様は面白かった。2023/01/18