内容説明
そっちはどうですか? あいかわらず最悪ですか?
こっちはこっちでまぁまぁ最悪かな!
無責任な暴力、すれ違う意識、のしかかる思い込み――
8人のきららの8つの人生が照射する
残酷でかすかにあたたかい世界の物語
人気モデル兼女優の偽物、痴漢された女子高生、特別な日を撮影するカメラマン、推しの若き死を願う会社員……
あちこちに現れて 誰かであり 誰でもない
名前のない私たちみんなが
「きらら」として生き抜いている
目次
トーチカ
積み重なる密室
スカート・デンタータ
花束
消滅
幸せな女たち
美しい死
愛情
トーチカ2
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
なゆ
69
確かに、全編に青木きららは存在している。久しぶりの藤野さん、いい感じにへんてこで面白い。へんてこ加減も小気味よくて、結局青木きららって何者だかわからないんだけど、次はどんな青木きららが現れるのかが楽しみになってもくる。中でも、幻の青木きららの話がなんだかほの哀しくもあって好き。読みながらちょっと思ったのは、フェミなスパイスも結構感じたりして、そこは意外だったかな。2023/06/29
藤月はな(灯れ松明の火)
66
性別のはざかいを縦横無尽に駆け抜ける人物の名は青木きらら。印象的なのは「スカート・デンタータ」。痴漢常習犯の身勝手な言い分と女性蔑視に胸のむかつきを覚えていたら『パワー』みたいな立場を入れ替えただけの男女の優劣逆転になって薄ら寒い恐怖と引っ掛かりを覚える。だが同時に「あの素敵なスカートが小学生の時にあれば、女になっていく自分の身体や男を汚らわしいと思わずに済んだのだろうか」と思わずにいられないのです。2つの「トーチカ」は生活の安楽さや世間の視線などの柵でシスターフッドが成立しなかった世界なんだろうな・・・2023/01/15
路地
51
話ごとに姿を変える青木きららとは何を象徴する存在なのか。。フェミニズムを軸にしつつ、それ一辺倒ではなく風刺を込めた物語と、一気に描き切ったかのように思える流れるような文体に圧倒される。2022/12/31
ぽてち
42
9篇を収録した短篇集。驚くのは、全篇に“青木きらら”が登場することだ。最初と最後の作品は繋がっているので、別人格の青木きららが8人登場する。主人公のときもあれば、脇役(しかも憎まれ役!)のときもあり飽きさせない。そして描かれている内容もなかなかシュールだ。藤野さんの著作は『来世の記憶』しか読んでおらず、合わない作家だと思っていたが、本作はとても好みだった。2022/11/29
サンタマリア
37
めっちゃ分かる。生きるのって闘いだよなぁと思いながら読んだ。(24歳 男性 会社員)2023/02/16