内容説明
世界のトップサッカーリーグの一つ、イタリア・セリエAのインテルで1度、ボローニャで2度優勝を果たした名将は、ある日、家族もろとも忽然と姿を消す。歴史、人種法、そしてホロコーストという名の“悲劇の風”が、彼を連れ去ってしまったのだ。さらに恐ろしいことに、その事実は70年間忘却されていた――。一人のサッカージャーナリストが、地道かつ丹念な調査で、彼と家族の足取りを追い、歴史の闇と真実を白日の下に晒す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Iwata Kentaro
5
読了。2023/02/26
chuji
3
久喜市立中央図書館の本。2022年10月初版。元書の初版年月日は不記載。ファシズム政権下のイタリアでサッカー選手、監督として活躍し、指揮官として三度のセリエA優勝を成し遂げたアールパード・ヴァイスは、1944年1月31日アウシュヴィッツで殺される。二年前に妻12歳の息子8歳の娘が送り込まれた収容所のガス室で、、そして忘れ去られてしまった。それらを掘り起こしたノンフィクション。丁度W杯開催されているが、開催国カタールを巡り人種差別・LGBTQ等様々な問題が内包されていて、素直に観戦できないオイラです。2022/11/26
Akio Kudo
1
★★★★★ イタリアセリエAでスクデット3回も勝ったのに、無情にもナチスのユダヤ人狩りの犠牲になってしまった監督の一生。資料も残されていないのに、探り当てたマラー二の執念がすごい2023/05/17
つじー
1
1930年代に数々の栄光を勝ち取ったユダヤ人監督の悲劇を丹念な取材に基づき書かれた本。ゆるやかに始まるユダヤ人迫害からホロコーストにいたるまでの過程の描写がえげつない。サッカーを通して歴史の闇をえぐりとっている。「ホロコーストは巨大な行政事業」という言葉が強く印象に残ってる。「殺戮」も「行政」になると「仕事」になる。「仕事」になると市井の人々も「殺戮」に取り組める。仕組みに組み込まれることで異常事態にも適応できてしまう人間のこわさが垣間見える。2023/02/17
りょなるど
1
実績だけ見てもセリエA史上最高の指揮官ではないだろうか。ただ戦争によって彼の足跡のほとんどが失われてしまった、というのが余りにも悲しすぎる。 またこの本では1930~40年代のイタリアサッカー・オランダサッカーや当時のイタリア・フランス・オランダ・ドイツの社会情勢の一端もわかる1冊となっている。2023/01/28