内容説明
W.ミュラーの詩にシューベルトが音楽をつけたせつない歌曲集。幾重にも折り重なる象徴と、原作詩の複雑な成立事情を解きほぐし、陰影に富んだ背景世界を描き出す。付・歌詞対訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
91
前著「死せる菩提樹」での「冬の旅」に続き、梅津さんが「美しき水車屋の娘」を論じる。「水車屋は、差別と不浄の象徴」との指摘に驚く。水車屋の娘も粉挽きの若者も、被差別者の不浄な人間としての翳りを背負っていることを前提として受容すべきだとする。「冬の旅」の絶望・諦念・疎外感に対して、「美しき水車屋の娘」には青春の瑞々しさ・抒情のような前向きな精神を感じていた私には、余りに衝撃的過ぎて立ち直れない。平安に満ちた終曲の「小川の子守歌」が救済ではないと言われると、困る。梅津さんの深い分析は尊敬するが、やっぱり困る…。2022/07/12
ヨハネス
7
半分しか読めていないが次の予約者が入ってしまったので、後半はまた借り直して読む。上皇后がその昔「美しき粉屋の娘」と呼ばれたことをいつも連想してしまうが、本当に「水車屋の娘」に侮蔑、差別的な意味があったとは。ベルリンでの「サロン」でのミュラーたちの詳細が長く語られるが、いわゆる「恋バナ」なので飽きずに楽しめた。2022/06/07
ヨハネス
6
後半から読了。シューベルトの曲について大変細かく説明されているので、一曲ずつじっくり聴きながら読むととても楽しい。YouTube、頼りになるなあ。2022/07/20
NyanNyanShinji
1
面白くてあっという間に読んでしまった。一般にこの曲のタイトルには水車小屋とされるが決して小屋ではなくて水車の動力を用いた大きな製粉工場である事や当時のドイツでは水車屋という職業が差別を受けいたこと、そのせいか水車屋の娘と言うものが性に奔放と言うイメージがあった等この曲を知る為の歴史的社会的背景が描かれる。そしてミュラーが属していたサロンでこの曲の原点となる歌芝居を皆で合作した事、そのサロンでのミュラーの叶わぬ恋と言ったこの詩集の血肉が如何に付いて行ったのかがよく分かった。素晴らしい本だった。2023/05/25
Norikazu Torii
1
三大歌曲集の中では、一番苦手だったが、この本を読んで俄然、興味が沸いてきた。それにしても、我々が当たり前だと思っている事でも、その国に行くと全く意味あいが異なってくるものである。2023/02/01