内容説明
一九八〇年、『時刻表2万キロ』の著者は全線乗りつぶしのため台湾へと向かった。戒厳令下で日本人観光客は団体ツアーばかりの当時、阿里山鉄道を筆頭とする狭々軌鉄道や、開通したばかりの超特急、砂糖会社線などを八日間で乗り尽くす。その後の八三年、九四年の全島一周達成の紀行を増補した著者台湾紀行の完全版。〈解説〉関川夏央
(目次より)
台湾鉄路千公里
1 一九八〇年六月二日(月)
桃園国際機場/台北車站/自強号、往高雄/空襲警報時旅客須知
2 六月三日(火)
焄光号餐車/対号特快車/阿里山森林鉄路/呉鳳旅社
3 六月四日(水)
台糖公司虎尾総廠路線/集集線/海線、山線、循迴追分線/台中柳川西路
4 六月五日(木)
東勢線・内湾線/淡水線・新北投/台北夜場
5 六月六日(金)
濂洞・侯?・菁桐/嶮路北迴線/花蓮新站
6 六月七日(土)
花蓮港/太魯閣峡/狭々軌特急、光華号/台東市
7 六月八日(日)
公路局公共汽車、金龍号/屏東線、東港線
終 章
あとがき
台湾鉄路千百公里
台湾一周二人三脚
台湾一周、全線開通
解説(関川夏央)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
R
31
1980年代に鉄道で台湾一周をした紀行文。著名な乗り鉄の人だそうで、本当に鉄道に乗ることを目的として、綿密に台湾の鉄路とダイヤを調べて、支線や珍しい車両などを乗り継いでいく。当時の台湾の様子を知ることができる面白さもあるが、今時のグルメ目線からは、ありえないほど料理に懐疑的なのが面白かった。三つ葉のようなものと、パクチーと思しきものが紹介されて、食べられたものではないといった感想が新鮮だった。発展していく台湾の姿が見えるようで興味深かった。2023/10/18
さっと
13
角川文庫版『台湾鉄路千公里』(1980年の台湾国鉄完乗+著者あこがれの阿里山森林鉄道の乗車記)は2010年代はじめ当時絶版が相次いでいた宮脇作品を集めていた私にどうしてもリアル古本屋で出会えずオンラインで購入せざるを得なかった思い出の一冊。これは他文庫に収録されていた台湾紀行(東部幹線の台東までの広軌化がなった1982年、台東と高雄の南部東西を結ぶ南廻線開通後の1994年など)も含めた完全版。阿川弘之の南蛮阿呆列車の完全版といい、中公文庫の仕事すばらしすぎる。台湾東部は未踏なので機会があれば行ってみたい。2023/01/26
アメヲトコ
8
1980年連載、完全版22年刊。台湾の鉄道乗りつぶしの紀行ですが、当時の台湾は蒋経国政権で戒厳令下、トンネルや橋のたもとには銃剣を構えた兵士が立ち、時刻表には空襲警報時の退避法が記され、日本からの観光客と言えば買春ツアーの男性客(まさしく日本人の恥!)という時代です。それでも台湾で出会った人々とのやり取りには実に味わいがあり、郷愁を覚えます。本文庫は80年発表の表題作のほか、台湾再訪、再々訪時の旅行記も収録され、台湾の変貌を知ることができますが、やはり出色は表題作で、旅は一人に限ることを教えてくれます。2023/07/05
読書熊
6
1980年ごろの台湾の鉄道を乗り倒す。独特の味わいがある2022/11/14
tegi
4
「年間五十万人の日本人男性が~そのほとんどが女性目当て」で台湾に訪れていたという時代の記録として読む。それが占領期でもなんでもなく1980年だというのだから驚く。今老齢の台湾の人たちがもし日本語を操れるとすればその次代に培った可能性があるのではないか。こういうところの記録と贖罪もしていかんといけないよな、日本は。/紀行文としての面白さはさすがの宮脇俊三。大変なことを労力をかけてやっていることへの自虐の塩梅が今のオタクほど明らかで露悪的になっていないのがいい。2023/06/10