内容説明
フィクションの世界でよく題材にされ,人々の間でイメージが出来上がっている人工冬眠.2020年に発表された著者らの研究成果は,いまだ確立されていないこの技術の実現に向けて飛躍的な貢献をすると期待されている.日々研究開発に挑む研究者としての自身の体験や想いをふんだんに交えながら,「人類冬眠計画」を披露する.
目次
はじめに
第1章 冬眠との出会い
人工冬眠とはなにか
小児科医として働く
子どもは元気
国立成育医療センター
麻酔との出会い
重症患者を搬送することはとても難しい
マダガスカル島のキツネザル
神戸理化学研究所
◆コラム 夏なのに冬眠
第2章 睡眠研究から休眠研究へ
概日時計と睡眠
睡眠の謎
睡眠実験のジレンマ
マウスに悟られずに睡眠を測定する
マウスに触れずに呼吸パターンを測定する
呼吸波形から睡眠を判定する
ロールモデル
◆コラム 科学者とプログラミング
第3章 冷たいことにはわけがある
冬眠研究の歴史
冷たい哺乳類
冷たくても動き続ける心臓
冬眠中の体温は制御されている
体温よりも代謝が先に落ちる
休眠の研究にふさわしい動物
マウスを用いた休眠研究に必要な環境
冬眠と日内休眠の違い
◆コラム 冬眠とサーカディアンリズム
第4章 哺乳類を冷たくするには
視床下部は体温調節の司令塔
QRFPというペプチド
どこのQRFP神経が機能しているのか?
QIHの発見 視床下部のQRFP神経を興奮させると冬眠様状態に
Q神経の本当の役割
QIHが冬眠研究に与えるインパクト
◆コラム サイエンスと偶然
第5章 人工冬眠を目指して
人類冬眠計画
人工冬眠の実現性
発明と発見
人工冬眠によって変わる未来
人間を冷やすとなにが問題なのか
低代謝耐性
省エネモード
人工冬眠を実現するために人間に必要なこと
◆コラム 地球人から宇宙人へ
おわりに
参考文献